就任式は７日（日本時間の７日午後）、首都キエフにある議会で行われ、先月の選挙で当選したポロシェンコ氏が「ウクライナの主権と独立を守るため全力を尽くす」と述べて宣誓を行い、正式に大統領に就任しました。
就任式にはアメリカのバイデン副大統領、ＥＵのファンロンパイ大統領ら２０を超える国や機関の代表らが参加し、ロシアからはズラボフ・ウクライナ大使が出席しました。
ポロシェンコ大統領は演説のなかで「できるだけ早くＥＵ加盟の前提となる経済協定に署名しなければならない」と述べ、ＥＵ加盟に向けた動きを加速する考えを示しました。
一方、ロシアが一方的に編入したクリミアについても、「クリミアはロシアが占領したが、過去も現在も未来もウクライナの領土だ。クリミアについては妥協はしない」と述べ、ロシアに対して返還を求める立場を強調し、プーチン大統領にも６日、こうした立場を直接伝えたことを明らかにしました。
さらに、今も東部で分離独立を目指す親ロシア派の武装集団と政権側との間で戦闘が続いていることについては、「戦争や復讐はしたくない。平和が訪れてほしい」と述べ、東部の親ロシア派に武装解除するよう求めるとともに、近く現地を訪れて武装集団以外の代表と対話を行い、分離独立の動きを強める東部との融和を図っていきたいとの考えを示しました。
ポロシェンコ氏は４８歳。
ウクライナの代表的なチョコレートメーカーを経営する大富豪で、「チョコレート王」として知られています。
欧米寄りのユーシェンコ政権で外相を務め、その後ロシア寄りのヤヌコービッチ政権でも経済発展・貿易相を務めるなど、実業家の経験から現実的な対応を取ることが評価されてきました。
先月行われた大統領選挙では、東部と西部の融和を図る重要性を訴え、過半数を獲得して当選を果たしました。
ポロシェンコ氏は、ロシア語を使う権利を保障し、就任後まず東部を訪れて対話を行うと述べるなど、親ロシア派の住民に配慮する姿勢を示し、プーチン大統領と会談してロシアとの関係を正常化させる意向も示しています。
その一方で、ＥＵ＝ヨーロッパ連合への加盟を目指すことや、ロシアに編入されたクリミアの返還を求める考えを示し、特に東部の親ロシア派の武装集団に対しては、「武器を手放さない者とは交渉しない」として、軍事作戦を続ける強硬な姿勢を示しています。
ウクライナ東部では、就任式が行われた７日も暫定政権と親ロシア派の武装集団の間で激しい戦闘が続いています。
親ロシア派の武装集団によりますと、ドネツク州のスラビャンスクでは７日、暫定政権が武装集団に対して砲撃を行っています。
前日の６日には暫定政権と親ロシア派の武装集団の間で銃撃戦となったほか、武装集団が暫定政権の装甲車両２０両を破壊し、偵察機１機を撃墜したということです。
撃墜された偵察機を撮影したとされる映像には、航空機と見られる物体から空中で瞬間的に大きな火が出た様子が映っています。
これについて暫定政権は、人道支援物資を積んでいた暫定政権の輸送機１機が親ロシア派の武装集団に撃墜されたことを認めたうえで、「ロシアからの武装集団が国内に流入している」として、ロシアとの国境の検問所の一部を閉鎖したことを明らかにしました。
ウクライナ東部で続いている戦闘は、収束に向かう見通しは立っていません。
ロシアのプーチン大統領は６日、記者団に対し、フランスのノルマンディーでアメリカのオバマ大統領と、大統領就任式を控えたウクライナのポロシェンコ氏と会談したことを明らかにし、いずれの会談も「中身が濃いものだった」と述べました。
このうちポロシェンコ氏とは、席に着きながら１５分にわたってことばを交わし、政権側と親ロシア派の武装集団が戦闘を続けるウクライナ東部の情勢について話したということです。
これについてプーチン大統領は、「ウクライナ東部の流血の事態を速やかに停止しなければならないというポロシェンコ氏の立場を歓迎しないわけにはいかない」と述べ、ウクライナでの流血の事態を止める必要があるとの認識で一致したことを明らかにしました。
そのうえで「交渉の当事者はロシアとウクライナではなく、ウクライナ中央政府と東部の代表であるべきだ」と述べ、ウクライナ国内の対話を促す姿勢を改めて示しました。
ただウクライナのＥＵ＝ヨーロッパ連合加盟に向けた動きに対し、「われわれは自国の経済を守るための措置を取る必要が出てくる」とＥＵ各国の首脳やポロシェンコ氏に伝えたことを明らかにし、ウクライナの親欧米路線をけん制する姿勢を示しました。
Poroshenko promises united Ukraine and no compromise on Crimea | Reuters
