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刑事司法改革の最終案まとまる NHKニュース

法制審議会の特別部会は、厚生労働省村木厚子さんの事件などをきっかけに3年前に設置され、取り調べの録音・録画の法制化や新たな捜査手法の導入などを議論してきました。9日は法案の要綱の最終案について委員による採決が行われ、全会一致で了承されました。
この案では、取り調べの録音・録画について、裁判員裁判の事件と検察の独自捜査事件を対象にすべての過程で行われ、一定の期間がたった段階で必要に応じて制度の見直しを検討することを義務づけています。
また、新たな捜査手法として司法取引が導入され、容疑者や被告が他人の犯罪を明らかにする供述や証拠の提出をして捜査に協力した場合、見返りとして検察が起訴を見送ったり、刑事責任を追及しないと約束したうえで裁判で証言させたりすることができるとしています。
この最終案は、ことし9月に開かれる予定の法制審議会の総会で正式に決定し、法務大臣に答申される予定で、法務省はこの案を基に来年の通常国会に法案を提出する方針です。

法制審の特別部会がまとめた最終案には日本の刑事司法の在り方を大きく変える制度の導入が盛り込まれています。
(録音・録画)
まず、取り調べの録音・録画です。これまで警察や検察が試行的に行ってきましたが、一部の事件で義務化されます。対象になるのは、殺人や傷害致死など裁判員裁判の対象になる事件と、特捜部が捜査する事件など検察が独自に捜査する事件で取り調べのすべての過程での録音・録画が義務づけられます。しかし録音・録画をすると容疑者が十分に供述できないと認められる場合や、容疑者が拒否した場合、それに暴力団の事件は例外にするとしています。また、法制化の対象にはしないものの付帯事項という形で「対象以外の事件の取り調べでも可能なかぎり幅広い範囲で録音・録画がなされることを強く期待する」と盛り込まれています。
(司法取引)
次に司法取引です。欧米では広く使われている2つの捜査手法が新たに日本で導入されます。1つ目は事件の容疑者や被告を対象にした「協議・合意制度」。容疑者や被告が共犯者など他人の犯罪を明らかにする供述や証拠の提出をして捜査に協力した場合、見返りとして検察が起訴を見送ったり、起訴した場合でも刑を軽くするよう裁判所に求めたりすることなどができるようになります。対象となる事件は、汚職や脱税、談合、それに振り込め詐欺などの知能犯罪と薬物や銃器の犯罪で捜査機関と容疑者や被告、それに弁護士の3者が合意することが条件になっています。また、無実の人が罪を犯したように「引き込む」のを防ぐため、うその供述や偽の証拠を出した場合は5年以下の懲役にする罰則を設けています。2つ目は裁判の証人を対象にした「刑事免責制度」。裁判では、事件について重要な事実を知っている証人がみずからの刑事責任が問われることを心配して証言をためらうケースがあります。この制度では、検察が「証言した内容について刑事責任を追及しない」と約束したうえで裁判所で証言させることができます。
(通信傍受)
次に捜査機関に電話やメールなどの傍受を認める「通信傍受」です。これまでは、薬物犯罪や組織的な殺人など4つの類型の犯罪に限って行われてきましたが、振り込め詐欺や組織的に行われる窃盗や誘拐、それに児童ポルノの製造など9つの類型の犯罪も新たに加えられます。また、傍受した内容を暗号化するなどして厳格に管理すれば通信事業者の立ち会いは必要なく、直ちに通信を傍受することができるとしています。
(その他)
このほか、最終案では証拠の開示や被害者の保護などについても新たな制度も導入するとしています。まず、国が弁護士の費用を負担する国選弁護人の拡充です。これまで懲役3年以上の罰則がある事件に限られていた対象の事件を、容疑者の身柄が拘束されるすべての事件に拡大します。次に検察が捜査の過程で集めた証拠の開示です。検察が被告に有利な証拠を隠したりしないようにするため、被告側が請求した場合、検察は原則として、すべての証拠の一覧表を開示することが義務づけられます。また、性犯罪など被害者のプライバシーへの配慮が必要な事件では被害者が自分の名前や住所を被告に知らせないまま証人として裁判に出廷することができるとしています。

最終案がまとまったことについて、特別部会の委員の但木敬一検事総長は「委員の間で意見が分かれ、まとまらないと思う時期もあったが、みんな何とかして新しい時代にふさわしい刑事司法制度を生み出したいという思いで満場一致となったのは、とても大きなことだ。法律ができて動き出せば、新しい時代は確実に幕を開けると思う」と感想を述べました。そのうえで、今後の捜査の在り方について「えん罪は捜査当局にとっても絶対に起こしてはいけないものであり、これからは新しい捜査手法を駆使して、客観的に犯罪を立証していき、適切な取り調べをして事案を明らかにすることが必要だ」と強調しました。

まとまった最終案について、特別部会の委員の日弁連=日本弁護士連合会の宮崎誠元会長は「総合的に見て一定の前進はあると考えて賛成したので不合格の点数とは言えないが、取り調べの録音・録画の対象事件が全体の僅か2%にとどまるなど失望感が大きい内容と言わざるをえない」と話しています。そのうえで「えん罪の原因になった日本の捜査にメスを入れるために議論を続けてきたので、現場で新たな制度が運用されたときにどのような影響がでるのかしっかり注視していきたい」と述べ、引き続き捜査の在り方を検証していくことの必要性を強調しています。