日本経済、中期的に下振れリスク 改革や債務削減が焦点=IMF | Reuters
国際通貨基金(IMF)は31日、日本政府が成長押し上げに必要な追加的な改革や公共債務の削減を実行できない可能性があるとし、日本経済には中期的に下振れリスクが存在するとの見解を示した。
IMFは日本経済に関する年次審査報告書で「アベノミクスで公約された改革が実行に移されなければ成長期待は低迷し、公共財政の健全性をめぐる懸念が高まる恐れがある」と指摘した。
安倍政権が、6月に打ち出した成長戦略第2弾にとどまらず、追加的な行動を取り、労働力の供給強化やサービス部門の規制緩和に向け一段と大胆な措置を講じていく必要があると促した。
物価上昇の裾野が広がっていることを踏まえ、日銀は現時点で追加緩和に踏み切る必要はないとしつつも、成長が鈍化すれば、資産買い入れを迅速に加速する用意を整えておくべきとした。
そのうえで、日本政府が必要な改革を実行しなければ、金融政策に負担がかかり、円の強さが過度に増すだけでなく、量的緩和からの出口を複雑にする恐れがあると警告した。
今年の日本の経済成長率は、堅調な設備投資や4月の消費増税前の力強い消費支出が寄与し、潜在成長率を上回る1.6%に達するとの見通しを示した。中期的には1%程度で安定すると見込む。
インフレ率が2%に到達する時期については、日銀の予測より1年遅い2016/17年度と予想。日銀は足元、現在の金融政策スタンスを維持する余裕があるとしつつも、成長押し上げに向けた構造改革を伴わない持続的な金融緩和はいずれ、金融不安定化につながる恐れがあるとした。
消費増税法に基づき、来年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げについては、計画通り実行すべきで、公的債務の負担軽減に向け、さらに努力すべきとした。法人税率の引き下げについては、企業の投資促進につながる可能性があるものの、税収減を埋め合わせるための方策も必要になるとの見方を示した。
IMFは年に1度、各国の経済政策などに関する報告をまとめており、31日に日本について結果を公表しました。
報告は、これまでの日本の経済運営をおおむね評価したうえで、ことしの経済成長率は消費税率引き上げの反動で一時的に落ち込むものの、このあと回復軌道に戻り、1.6%のプラス成長に達すると予測しました。
一方で、中長期的には巨額の債務を抱え、人口が減少する日本経済には「大きなリスクがある」と指摘しました。
具体的には、日本がことし6月に決定した新たな成長戦略の着実な実行を促すとともに、女性の活用や外国人労働者の受け入れをはじめ、労働市場改革などを提言しました。
また、来年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げを確実に実行しても「さらなる措置を講じなければ財政状況は安定しない」と懸念を示し、消費税率を最低でも15%まで段階的に引き上げていくことなどを選択肢に挙げて、中長期の財政健全化の具体策を速やかに示すよう求めました。