https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

焦点:金融庁・日銀が「マクロプルーデンス」強化へ、金利リスク注視 | Reuters

 金融庁と日銀がマクロ経済や市場動向を含めた金融システム全体のリスクを分析し、政策対応を行う「マクロプルーデンス政策」の強化に乗り出した。


世界的に大胆な金融緩和が展開される中で潜在的なリスクへの監視体制を整備し、日本経済の持続的な成長を確保する狙いがある。当面は、地域金融機関を中心に高水準にある金利リスクの動向を引き続き注視することになりそうだ。


<国際的潮流・脱デフレ視野に対応>


マクロプルーデンスは、金融庁検査や日銀考査など個々の金融機関の健全性を確保するミクロプルーデンスとは対照的な概念。リーマンショック後の世界的な金融危機を受けて国際的に議論が活発化しており、先行する米欧では具体的な体制整備も進められている。


日本の金融当局もバブル経済崩壊に伴う金融システム不安を教訓とし、伝統的にマクロプルーデンスを重視してきた。もっともその後は、リーマンショックを受けても金融システムの安定が維持され、デフレ経済が長引く中で、議論を進展させる誘因が乏しかったといえる。


しかし、金融市場の国際的な連関の強まりや、金融技術の進化、投資家の多様化など日本を取り巻く金融環境は大きく変化。世界的に大規模な金融緩和の継続が見込まれる中、日本経済のデフレ脱却も視野に入りつつあり、潜在的なリスクは蓄積されやすい状況にある。マクロプルーデンスをめぐる国際的な議論や体制整備の流れに対して、日本の当局も対応する必要性が高まっている。


金融庁が取り組み加速、ストレステストに活用>


日本でマクロプルーデンス政策を担当する金融庁と日銀は、今年に入って一段と取り組みを具体化させている。金融庁は、検査・監督の重点を、従来の個別金融機関の健全性確保からデフレ脱却に向けた金融仲介機能の円滑化にシフトしており、マクロプルーデンス強化を今年度の行政課題の1つと位置づけて対応を加速する。


具体的には、さまざまな金融市場やマクロ経済の動向に加え、金融機関のビジネス戦略が経済に与える影響など同庁内外の情報を、新設したマクロプルーデンス担当参事官の下に一元的に集約し、管理・分析する体制を整える。


こうした情報を今後のストレステストなどにも活用して金融システムの耐性把握に努め、検査・監督方針にも反映していく考え。新たな自己資本比率規制「バーゼル3」で導入される、経済変動に応じて銀行の資本上積みの必要性を各国当局が判断する仕組みに対応する狙いもある。


<日銀との連携も強化>


金融庁と日銀の連携強化も進んでいる。金融庁長官と日銀副総裁が出席する「金融庁日本銀行連絡会」を6月に新設。中曽宏日銀副総裁は連絡会について「マクロプルーデンスに関する諸情勢、対応について意見交換をして、認識の共有を図る」ことが狙いと説明する。


行政権限を有する金融庁と、マクロプルーデンスの観点による分析力に定評のある日銀が金融システムの潜在的なリスクについて認識をすり合わせることで、金融面の不均衡を早めに察知し、迅速な政策発動につなげることが可能となる。


金利リスクは引き続き高水準>


金融システムが抱えるさまざまなリスクの中でも、当面は金利リスクの動向が焦点になりそうだ。日銀が量的・質的金融緩和(QQE)の推進で大規模に国債を買い入れているにもかかわらず、地域金融機関を中心に金利リスクは引き続き高水準にある。


デフレ脱却が視野に入りつつある中で、QQEが出口に向かうのではないか、という思惑が市場に浮上した場合、長期金利が短期間に急上昇する可能性は否定できない。


日銀が半期に1回公表している「金融システムレポート」では、ストレステストにおいて、仮に長期金利が2%上昇しても「金融機関の自己資本比率は全体として規制水準を上回って推移する」と分析しているが、短期的な金利の急変動が他市場に及ぼす影響や、個別の経営問題を通じた金融システムへの波及など不確実性は拭えない。


政府の財政規律に疑念が生じるなど経済実態に反して金利が急上昇するケースでは、なおさらだ。


金融庁は今年7月に初めて公表した「金融モニタリングレポート」で、地銀の金利リスクに関して「毎期の収益を確保するなどの観点から、国債運用の積み増しや更なる運用の長期化を続けている銀行もある」と警鐘を鳴らした。


関係者によると、細溝清史長官は、7月に行われた地方銀行トップとの会合で「現在、金利は非常に低位で安定しているが、こうした金融環境はいつどう変わるか分からない」と指摘し、金利リスク動向を注視していく考えを示している。


もっとも、金融面の不均衡がいつどこの分野で顕在化するかを予測するのは難しい。マクロプルーデンス政策による具体的な対処方法も、検査や考査を通じた資産査定から、資本規制によるバランスシートの抑制、貸し出しを直接制限する行政措置など、考え方や手法はさまざまだ。


足元ではバブルの兆候など「金融面の不均衡はみられていない」(日銀幹部)というのが政府・日銀の共通認識だが、将来に備えて、今のうちから当局が金融システムのリスクについて分析力を高め、連携を深めることの重要性は増している。