バチカン:「同性愛認知」盛らず…司教会議 内部対立露呈 - 毎日新聞
キリスト教カトリックの総本山バチカン(ローマ法王庁)は18日、教会が現代の家族問題にいかに取り組むかを話し合った世界代表司教会議の最終報告を採択した。男女による結婚を神聖視する教義に厳格な保守派の抵抗で、中間報告に入っていた同性愛者「認知」の表現は盛り込まれず、現実的な対応を求める改革派との内部対立が露呈した。世界各国の教会での議論を踏まえ、来年10月の再討議でバチカンとしての最終的な立場を打ち出す。
13日に発表された中間報告は改革派寄りの内容で、同性愛者について「キリスト教徒社会に寄与し、(優れた)特性を提供することができる」と評価。同性婚自体は認めていないものの、同性愛者カップルの共同生活が「パートナーの暮らしにとって、かけがえのない支えになっている場合もある」と好意的にとらえていた。
だが、保守派の抗議を受け、最終報告案では「家族は男女の結婚に基づく」と記され、「同性愛指向の人々は敬意を持って丁寧に対応されなければならない」との当たり障りのない表現に変更された。最終報告案の同性愛者に関する項目は、投票した司教183人の3分の2以上の支持を得られず、継続協議となった。表現変更に改革派が反対票を投じたとみられている。
また、離婚した信徒がミサで重要儀式の「聖体拝領」を受けられるようにすべきかどうかに関しても司教の間で意見が割れた。現状では、離婚した信徒が教会から結婚の「取り消し」を得ずに行政手続きによってのみ再婚した場合、聖体拝領を受けられないルールになっている。
保守、改革両派の対立が表面化した司教会議ではあったが、これまでタブー視されてきた同性愛者などへの対応に光が当てられた意義は大きい。
フランシスコ・ローマ法王は討議の透明性を高めるため、最終報告の項目ごとの投票結果を公表する異例の措置を取り、閉幕演説で保守派の「敵対的な厳格さ」と、改革派の「偽りの慈悲」を共に戒めた。同性愛者団体は「中間報告にあった同性愛者評価の表現が最終報告に盛り込まれなかったのは残念」と受け止めている。
会議は5〜19日にバチカンで開かれ、世界各国の司教団代表ら253人が参加。フランシスコ法王は最終日の19日、4代前の法王、故パウロ6世(在位1963〜78年)を「聖人」に次ぐ「福者」とするミサをサンピエトロ広場で開き、「神は新しい事を恐れない」と教会刷新を訴えた。