中国がアジアインフラ投資銀行の設立を提唱する背景には、大きく2つのねらいがあるとみられます。
その1つは「国際的な発言権の拡大」です。中国は経済規模では世界第2位になりましたが、IMF=国際通貨基金や世界銀行など、アメリカが主導する既存の国際金融機関の中では発言権が思うように拡大しないことに不満を強めているとされます。
習近平指導部は国際社会における中国の影響力をより強めようと、金融や貿易、安全保障などの分野でみずからが主導する新しい国際的な枠組みを作ることに力を入れています。
なかでも「アジアの経済成長に必要なインフラ建設の資金を提供する」としているアジアインフラ投資銀行は、各国からの賛同を得やすいとみていて、その設立は発言権の拡大に向けた重要な取り組みの1つに位置づけられています。
もう1つは、「経済成長の後押し」です。中国経済は、不動産投資の伸び悩みを背景に企業の生産活動など内需が振るわず景気が減速しています。しかし、成長の速度よりも質を重視する「新常態=ニューノーマル」という成長モデルへの転換を掲げた中国政府としては、公共事業をばらまいて景気を刺激する政策をとるのは難しいのが現状です。
こうしたなか、アジアインフラ投資銀行を通じてアジア各国での鉄道建設などのインフラ事業を進めることで中国企業の輸出を後押しして、経済成長を図るねらいもあるとみられます。