集団的自衛権の行使を可能にすることなどを盛り込んだ安全保障関連法案を審議する衆議院の特別委員会は、1日安倍総理大臣も出席して集中審議を行いました。
この中で、民主党の玄葉選挙対策委員長は、外国軍隊への後方支援について定めた周辺事態法が重要影響事態法に改正され、自衛隊の活動範囲が拡大することについて「周辺事態にはあたらないが、重要影響事態にはあたるケースを示してほしい」と述べました。
これに対し、安倍総理大臣は「例えば、仮に、中東、インド洋などの地域で、深刻な軍事的緊張状態や武力衝突が発生した場合で、わが国に物資を運ぶ日本の船舶に深刻な影響が及ぶ可能性があり、かつアメリカ等は、こうした事態に対応するために活動している状況が生じたときは、その他の状況も勘案したうえで重要影響事態に該当することはありうる」と述べました。
また、安倍総理大臣は、玄葉氏が「集団安全保障活動としての武力行使と集団的自衛権の要件が同じであるというのはふに落ちない」とただしたのに対し、「国連決議等々があって、集団安全保障措置となったとしても、新3要件に該当すれば当然、継続する」と述べました。
さらに、玄葉氏が「『攻撃を受けた国の要請または同意』を武力行使の『4要件』として、なぜ入れないのか」と指摘したのに対し、安倍総理大臣は、「『攻撃を受けた国の要請または同意』は、わが国が独自に法律で定めるまでもなく、国際法上の明確な要件で、存立危機事態の要件として重ねて規定する必要はない。存立危機事態に至ったとき、政府は対処基本方針を策定し、直ちに国会承認を求めるが、攻撃を受けた国の要請または同意は、認定の前提となった事実として明記する」と述べました。
維新の党の今井政務調査会長は、武力行使の新3要件について「第1要件の『わが国と密接な関係にある他国』というのは、どういう国を指すのか」とただしました。
これに対し、安倍総理大臣は「一般に、外部からの武力攻撃に対し、共通の危険として対処しようという共通の関心を持ち、わが国と共同して対処しようとする意思を表明する国を指す。同盟国であるアメリカは基本的にあたると考えているが、アメリカ以外の外国が該当するかは、相当、限定される」と述べました。
そのうえで、今井氏が、ホルムズ海峡での機雷の掃海活動について「密接な国が攻撃されないといけないが、オマーンやイランもありうるのか」と質問したのに対し、安倍総理大臣は「沿岸国としてイランとかオマーンということはありうる。活動を行ううえでは、そうした国々の了解がおそらく実際は必要となる。ただ、ホルムズ海峡は多くの国の船が通っており、機雷の敷設によって大きな影響を受ける国、触雷の危険性がある国に対する武力行使ということも考えられないわけではない」と述べました。
共産党の穀田・国会対策委員長は、集団的自衛権の行使について「日本への直接の武力攻撃がないにもかかわらず、他国の領域に出て行って、敵基地を攻撃することまで可能なのか」とただしました。
これに対し、安倍総理大臣は「ミサイルが攻撃してくる策源地を攻撃しなければ、国民を守れない、座して死を待つべきではないという論理が控えているが、個別的自衛権においても、その能力を持っていない。ましてや集団的自衛権において、打撃力を持っているアメリカが、打撃力を持っていない日本に、『自国の安全のために攻撃をしてくれ』とは想定しえないわけで、現実問題としてはありえない」と述べました。
また、安倍総理大臣は、集団的自衛権の行使が可能となる存立危機事態の基準について、「攻撃国の意思もあれば、能力もある。発生場所や規模、態様、推移などを総合的に勘案する中で、当該国は日本に対し、『攻撃する意思はない』と言っているが、その場所、能力、状況から見て、『そうでもないかもしれない』という推測も十分ありうるわけで、単純に見ることはできない。総合的にわが国に戦禍が及ぶ蓋然性等を判断していく」と述べました。