コラム:軽視できない天津爆発、中国と原油安で日本は岐路に | Reuters
中国の景気減速に天津港爆発事件が追い打ちをかけ、経済的な混乱が長期化するリスクが顕在化してきた。原油価格も6年5カ月ぶりの低水準に下落し、中国減速と原油安がリンクする構図が出来上がりつつある。
日本経済にとって、原油安のメリットと景気・物価の下押し圧力のどちらが強くなるのか。政府・日銀は的確な判断を下せるかどうか、その力量が問われる局面に差しかかろうとしている。
中国の景気減速は、世界中の市場関係者が織り込む「事実」として認識され出した。7月の輸出は前年比マイナス8.3%と4カ月ぶりの落ち込みとなり、輸入も同マイナス8.1%と縮小傾向が継続。中国商務省は19日、今後数カ月で中国の輸出が減少する可能性は否定できないとの見通しを示すとともに、中国の貿易は厳しい状況と不透明性に直面しているとの見解を公表した。
そこに天津港爆発事件が発生し、さらに影響の深刻化と長期化が懸念され出した。国土交通省が作成した2012年の「世界の港湾取扱貨物量ランキング」によると、天津港は4億7700万トンで、上海、シンガポールに次いで世界3位。
日本の名古屋(15位)、千葉(23位)、横浜(31位)を合わせても4億7600万トンと天津港に及ばない。その港湾の機能停止は、各方面に影響を及ぼすと予想される。
第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は、事故発生現場が、上海を中心とする「長江デルタ」、香港・広州周辺で深圳を含んだ「珠江デルタ」に次ぐ、3つ目の経済圏として中国が重視してきた天津・北京の「京津経済圏」の中心に位置する先端開発ゾーンであると指摘。
一方、米原油先物CLc1は19日に一時、1バレル40.15ドルと約6年5カ月ぶりの安値を付けた。直接のきっかけは米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間在庫統計で、市場在庫が予想を上回って大幅に増加したことだ。
だが、根底には中国経済の減速によって、世界の原油需要が早期に回復を見込めないという「構造問題」がある。
マーケットでは、40ドルを割り込んで30ドル台での推移が長期化するとの見通しが台頭してきた。需要サイドでも、イラン産原油の市場への流入やサウジアラビアの増産観測、米シェールオイルの増産見通しなど、価格を押し下げる要因が目白押しとなっている。