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〔焦点〕所得分配の色彩強めるアベノミクス、行き過ぎなら副作用の懸念 | Reuters

「新3本の矢」を掲げたアベノミクスは、1億総活躍緊急対策の中で成長の果実を幅広い階層へ分配することに軸足を置き始めた。最低賃金引き上げや、低所得者への手厚い支給金、介護・出産支援拡大などが盛り込まれた。しかし、こうした所得再分配への傾斜は、「民主党政権と酷似」との指摘が有識者から出ており、行き過ぎると副作用が強まる懸念が浮上している。


最低賃金増、正規社員賃金抑制の懸念>


最低賃金が上昇しているので、人件費全体のコストが増えて、生産性が低下している。その分、来春闘での賃上げは今年並みか、それ以下に抑える」──。11月ロイター企業調査では、小売業からこんなコメントが寄せられた。


最低賃金の引き上げについて、安倍晋三首相は年率3%程度引き上げることをめどとする方針を打ち出した。


今年度は全国加重平均で798円となっている最低賃金は、企業業績のよかった昨年度から2.3%上昇。その前の年は2.0%の上昇だった。これを3%に引き上げるのは、一段の好業績が前提となるだろう。


このため、大企業よりも最低賃金近辺で働く労働者の割合が高い中小企業の人件費への打撃が大きいとみられる。ただ、大企業を中心としたロイター企業調査の回答にも、影響がうかがえる。


第1次安倍内閣でも似たような最低賃金引き上げ政策が実施されたが、日本総研・調査部長の山田久氏によれば、当時は最低賃金が引き上げられた場合、その水準近辺の給与水準で働く労働者の割合が全体の2%程度であり、企業にとって人件費増の影響は限定的だった。


しかし、その後は年々最低賃金が上昇した結果、足元ではその割合が7%程度に上昇、「中小企業を中心に企業への影響は大きいだろう」(山田氏)と見ている。


中小金属・機械メーカー労働組合であるJAM(ものづくり産業労組)では、公正な賃金環境の観点からみても、最低賃金の引き上げに賛成の立場だが「正規社員への給与抑制に何らかの影響が出ないとはいえず、労組としてはその点は監視する必要はある」との見方を示している。


同時に最低賃金が反映されるのは、少なくとも再来年の春闘で、その影響はわからないとしている。


山田氏は「最低賃金引き上げと、成長企業支援策、生産性の低い企業から高い企業への雇用流動化策の3つがセットで打ち出されないと効果は薄い」と指摘。中小企業の生産性向上に加えて、どこまで産業・労働政策の改革に踏み込めるかも問われている。


安倍首相は最低賃金の引き上げとともに、中小企業の生産性向上の支援策も打ち出す方針だが、実際にどのような政策が打ち出されるのか、詳細はこれからの対応待ち。


<分配政策に軸足、民主党政策に接近の声も>


最低賃金に限らず、今回の1億総活躍社会に向けた安倍政権の緊急対策の特徴は、成長の果実を分配に回し、好循環につなげることを打ち出した点だ。それは民主党政権の政策にも通ずるところがあると、政府関係者自らも認めている。


アベノミクスは、円安・株高といった金融・資本市場面からの環境整備で企業収益を押し上げ、それが消費や設備投資に回る好循環を描いていた。


だが、支出面への波及が思惑通りにいっていない。金融面からの効果が効いていないため、政府自ら消費につながる賃上げ要請と設備投資への環境整備に乗り出した格好だ。


福祉的な色彩の強い政策も並んだ。出生率1.8を目指して子育て支援や幼児教育無償化をはじめ、介護施設の増設や介護休暇給付金の引き上げも打ち出した。


山田氏はアベノミクスについて「分配政策への傾斜の色彩が強まった感じもする」と指摘する。


ただ「慈善事業的な分配政策をやり過ぎると、副作用は大きくなる」とも懸念する。賃金政策にしても、労使の話し合いや政治の介入で決まる日本のやり方は、生産性をもとに労働分配率を決める海外の方式とは異なり、本来のあるべき姿ではないとして、生産性を無視した賃上げは、持続的に成功しないとみている。


日興アセットマネジメント・チーフストラテジストの神山直樹氏は「社会保障的な分配政策が先か成長政策が先かは、民主党自民党の違いだが、本質は同じ」と指摘。


そのうえで民主党時代の最低賃金引き上げは、景気が悪く大胆にはできなかったが、安倍政権が実現できれば、最低賃金さえ引き上げできない企業は淘汰される政策でもあり、成長にもつながるとして評価している。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20151117#1447756621

#アベノミクス #最低賃金