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イタリアでの画学生時代は本当に貧乏を絵に書いたような生活をしておりましたから、毎月郵便為替で届く僅かながらの母からの仕送りは大袈裟ですが、私の命をつなぐ大事なお金でした。しかし、ある日その為替を換金しにフィレンツェ市内の郵便局へ行き、代えてもらったお金を財布に入れて鞄にしまった直後に、後ろで列をなしていた3人の男女にいきなり体当たりをされて、鞄の中から財布を持ち去られてしまったのです。


私はそのお金で家の周りにあるいくつかの食料品店の溜まりに溜まったツケを返済し、未払いの為に止められている電気やガスなどのインフラも復帰させる予定でした。それ以前に、その仕送りが、母が頑張って稼いだお金なのだと思うと、諦め難い怒りが込み上げてきました。

キューバ社会主義国家ですから、たとえどんなに経済状況が不安定であっても、外国人に対して盗みなどのような行為を働く事は、国家的には許し難い犯罪と見なされて、もしあの少年が捕まっていたらどうなっていたかもわかりません。ただ、私には走り去って行く、少年の骨と皮だけのやせ細った後ろ姿が目に焼き付いてしまいました。実は被害者は私ではなく、金目のものを欲する気持ちを煽られた彼のほうだったんじゃないかと暫し感慨深くなりました。

そうしているうちに、細々とバイオリンを教えながら暮らす彼女の家には、なぜか2台の立派なコピー機が設置されていたり、来る度に新しい電話機が置かれてあったり、繋いでもいないインターネット利用料が口座から毎月電話回線とともに引き落とされていたり、ここ数年だけでも莫大な金額のお金をその電話を貸してくれている請負会社に支払っていた事が判明したのです。


母曰く、ある日彼女の家に大手の通信事業会社を名乗る人物が現れて、それまでの古いシステムを一掃してもっと使い易い形のものにしましょうという類いの言葉で母を説得し、工事を入れ、気がついたらそのような請求が来るようになっていたというのです。

刑事弁護が必要なわけ| 庶民の弁護士 伊東良徳

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