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日本コカ・コーラ、ボトラー東西統合に見る限界(上) 王者の席は風前のともしび 高鳴る天敵サントリーの足音|週刊ダイヤモンド 企業特集|ダイヤモンド・オンライン

「このままだと近い将来、サントリーに抜かれるぞ」。それは大げさでも何でもなかった。


 10年前、コカ・コーラは30%ほどの市場シェアを誇り、2位のサントリー食品インターナショナルを12ポイントも引き離していた。しかし、この10年でサントリーが猛追。15年のシェアはコカ・コーラの27%に対し、サントリー21%と、差は6ポイントまで縮まっている。


 小売店などの手売りチャネルでは両社のシェアは拮抗し、関東や東海はサントリーにトップを奪われている(下図参照)。

 なぜ、コカ・コーラはここまで追い詰められたのか。理由は三つに集約される。


 一つ目は、自動販売機ビジネスの衰退だ。定価で販売できる自販機チャネルは利益率の高い収益源。83万台もの自販機を持つことがコカ・コーラの強みだった。


 しかし、コンビニエンスストアの出店攻勢や量販店での安売りの影響をもろに受け、自販機1台当たりの年間販売数量は減少。05年に1台当たり295ケースあったものが、14年には242ケースにまで低下している。


 しかも、である。昨年春、26万台の自販機を持つJT(日本たばこ産業)子会社ジャパンビバレッジホールディングスサントリーに奪われた。サントリーは自販機数を75万台まで増やし、もはや自販機台数はコカ・コーラの強みではなくなっている。


 自販機ビジネスが苦しくとも、手売りチャネルで販売本数をカバーすればシェアは維持できるが、手売りも苦戦。「ロングセラーが多く、新商品のヒットが少ない」(小売業界関係者)からだ。

サントリーに肉薄された三つ目にして最大の理由は、独自のフランチャイズ(FC)システムに限界が訪れていることにある。これは根本的な大問題であり、日本コカ・コーラのOBは「コカ・コーラは組織構造上、サントリーに勝てない」と明かす。

 簡単にコカ・コーラの組織を説明しよう。コカ・コーラは、独自のFCシステムを世界中で展開している。日本では、日本コカ・コーラ(CCJC)が商品の原液を販売し、FC契約を結ぶ6社のボトラーが、原液を購入して担当地域で商品の製造・販売を行う。

 最終商品が売れるほどに、CCJCもボトラーももうかるシステムなのだが、成熟市場で過当競争下の日本において「CCJCとボトラーの利害が一致しなくなっている」(CCJCのOB)。


 原液を売るCCJCは「量が出る」ことが重要なのに対し、ボトラーは「量を追求すると値下げを余儀なくされ、その費用がかさんで赤字になる」(ボトラー関係者)。


 CCJCはボトラーに「インセンティブ」と呼ばれる販売奨励金を支払って値下げ費用の一部をかぶり、“生かさず殺さず”の支配を続けてきた。


 過当競争が進むほど値下げ圧力がかかり、インセンティブ負担が増す。耐えかねたCCJCは「自分たちの利益目標の達成を優先すると、十分なインセンティブを支払えなくなった」(CCJC首脳)。


サントリーは一枚岩で値下げ原資の販売促進費を投下し、価格競争を仕掛けてくる。値下げ費用を賄い切れない各ボトラーは対抗できず、シェアを失ったのである。

 このジレンマから抜け出したいコカ・コーラは昨年、「価格ガードレール」と呼ばれる事実上の値上げ戦略を導入した。安売り競争では勝ち目がないと判断し、過当競争そのものを是正しようという試みである。


 確かに、過当競争が是正できれば、ある程度の販売数量を保ったままインセンティブの支払いに頭を悩ますこともなくなる。2リットルペットボトルが500ミリリットルのそれよりも安価な競争環境は異常で、価格を是正しようという試みは、至極まっとうな判断ではある。

 日本で多くの利益を生める背景には、市場の特殊性があります。例えば、収益性の高いチャネルである自動販売機。他国にも自販機はありますが、日本ほどのスケールで展開されている国はありません。


 商品ポートフォリオも特徴的です。他国では「コカ・コーラ」などの炭酸飲料がわれわれのコア商品です。しかし、日本では収益性の高い商品である缶コーヒーの「ジョージア」やスポーツドリンクの「アクエリアス」など、非炭酸飲料が7割以上を占めています。

確かに、量販店との価格差は大きくなります。しかし、自販機には利便性がある。

日本コカ・コーラ、ボトラー東西統合に見る限界(下) 東西統合の後に待ち受ける再FC化という“延命”戦略|週刊ダイヤモンド 企業特集|ダイヤモンド・オンライン

国内のコカ・コーラ関係者の多くは、「日本で注力すべきはコカ・コーラではなく健康軸」と口をそろえる。

コカ・コーラグループの頂点に君臨しているのは株主。中でも有名なのがウォーレン・バフェット率いる米投資会社のバークシャー・ハサウェイで、TCCCの株式の約9%を保有する筆頭株主だ。彼ら株主からTCCCに課されたタスクは“増配”である。

 株主の最大利益を最優先する「米国型資本主義モデル」の典型ともいわれるが、注目すべきはその利益の生み出し方である。


 TCCCは流通過程を、原液を販売する現地子会社と、製造・販売を担うボトラーとに分けている。日本では、現地子会社であるCCJCが6社のボトラーに原液を販売し、利益をTCCCに上納している。原液を売るTCCCは工場や製造設備への投資リスクを負わず、“最小投資”で“最大利益”を得るのだ。


 TCCCも子会社のCCJCも、増配により高い株価を実現することで“果実”を分け与えられる。TCCCやCCJCの幹部は、ストックオプション(自社株を割安で買う権利)を有しており、「株価を上げようというインセンティブが働く」(CCJC元首脳)仕組みになっている。


 常に利益を増やさなければならないTCCCは「各市場を二つに大別した効率的な投資戦略を立てている」(同)。その二つとは“投資”市場と“刈り取り”市場だ。例えば、TCCCは15年8月、中国を最重点の投資市場に位置付け、今後の成長ドライバーとして、17年までに40億ドル(約4500億円)の投資を行うことを明らかにした。


 一方、成熟市場である北米や欧州、そして日本は刈り取り市場に分類される。これらの市場ではボトラーの統合によるコスト削減が実施され、徹底して利益創出が求められる。今回、交渉が始まったイーストとウエストの統合は、日本での刈り取りの“総仕上げ”作業と言える。

ボトラーを統合すると、製造や物流、資材調達での設備の効率化により、大幅なコスト削減を実現できる。イーストは、13年にボトラー4社を統合したことで、3年間で約200億円のコスト削減に成功している。


 しかし、ボトラー統合には弊害もある。多くの場合、統合の過程でTCCCがボトラーに資本を注入するため、流通過程を原液と製造・販売とに分ける独自のフランチャイズ(FC)システムが崩れ、TCCCの収益性が下がるのだ。実際、北米では営業利益率は著しく低下。全社の21.8%に対し、米国のそれは11.3%と明らかに低い(15年12月期)。


 そこで、TCCCは統合後の戦略として、ボトラーの再FC化を計画している。北米では17年末までに統合した傘下のボトラーを再度解体して引き受け先を探す予定で、既に販売領域の40%超の再FC化に成功している。


 FCシステムの維持──。原点に戻り、これこそがTCCCが利益を生み出し続ける絶対条件と判断したのだろう。

 統合と再FC化を繰り返す“延命”戦略では、いずれサントリー食品インターナショナルにトップの座を奪われることになろう。


コカ・コーラグループは、独自のFCシステムが成熟市場である日本では成立しなくなったという現実を突き付けられている。