https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

日本も一神教になりかけた?:神様も仏様もいる国だからできること|日本人が知らない本当の世界経済の授業|ダイヤモンド・オンライン

「逆に、日本がいかに特殊なのかを理解したほうがいいと私は思うのです。4回目のゼミで話したように日本は世界システムに取り込まれなかったゆえに、世界の半分の人の宗教になった一神教の世界にも取り込まれませんでした(『増補版 なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?』参照)。ですから、自然の中で生まれたアニミズム、つまり古い昔の人間が持つ森の宗教、多神教の世界を残しています。そして、海外から渡来してきた弥生人と日本古来の縄文人が融合して日本人になったように、外から入ってきたものを、自分たちの文化に無理なく同化させていくのが得意なのです。例えば、お寺の中に神社があったりするじゃないですか」


「たしかに!よく考えたら変ですよね。前から不思議だったんです」


「日本人は、後から入ってきた仏教の仏様は、日本にいた神様が姿を変えたものというような感じで、新しく来た仏をもともといた神と同じ働きをするものと考えたわけです。こうして、仏様は日本の神様とケンカすることなく無理なく仲良く習合していくのです。逆に言えば、お寺に神社があるのが明治時代まで普通だったんですよ」


「なるほど、そういうわけでお寺に神社があったりするんですね」

「仏教はインド発祥ですよね。インド発祥の上座仏教は、戒律の順守、それから経典の学習、瞑想の修業などが目的で、妻帯も肉食も許されません。でも、日本の仏教は妻帯を許されていますし、修行中はお肉・お魚を謹んで精進料理を食べますが、修行が終わってしまえば特別厳しい戒律はありません。そして、葬式仏教と蔑んで言われることがありますが、本来の仏教にはない先祖供養や、普段の生活の中での礼節を敬うといったことを重視しています」


「わかりました!カレーはカレーだけど日本のカレーはインドで生まれた本当のカレーとはぜんぜん違うってことですね」


「そう。そのとおりです。日本人は本質を失わずに自分のところの文化に合わせたものにアレンジして取り込んでいくのが得意なのです。日本の仏教は日本古来の宗教である神道の影響を受けて、日本にふさわしい形で洗練されてきたわけです。ですから、もともとブッダが始めた原始的な仏教とは実践の方法は違いますが、本質を失ったわけではなく、ブッダが唱えたすばらしい哲学と教義に基づいているというわけですね。

「ちょっと脱線しますが、少しだけ。日本は多神教だっていってきましたけど、じつは、日本でも一瞬だけローマと同じように、政府が自分たちの正当性を主張するために神の権威を持ち出して、一神教にしようとしたことがあるんですよ」


「え〜。ホントですか」


「ええ、ホントです。さっきお寺に神社があるのが明治時代まで普通って言ったじゃないですか。なぜ明治時代までかっていうと、明治政府が一瞬だけ一神教にしようとしたからなんです。明治政府は日本を天皇が統治者だった“神武創業のころに戻す”という復古政策だったので、天皇の正統性を神道に求めたのです。そのときに神道を国教にしようという動きが起きました。これを国家神道といいます」


「なるほど。ローマと似たような話ですね」


「明治政府は神道を国教にして国家神道をつくり、神仏分離令を出して神仏の習合を廃し、分離してしまおうとしたのです。これがエスカレートして、廃仏毀釈というお寺を壊すなどの破壊行為につながっていきました。寺院が半分以下になり、今残っていたら国宝級の建物や仏像の多数が破壊されたり売却されたりしたのです」


一神教っぽいことが日本にもあったんですね!」


「江戸時代は神仏習合といっても、檀家制度のように江戸幕府が仏教のフランチャイズを使って民衆を支配していましたから、仏教側が圧倒的に優位にいたわけです。神道の側は、神官もお葬式を仏教でやらなければならないなど、フラストレーションがたまっていたのです。それが廃仏毀釈のような暴力的な行動として爆発する原因になったのです。


 明治政府は、お寺と神社を分けてしまおうとしただけで、お寺をつぶすところまで命令したわけではありません。しかしながらエスカレートして、結果的に日本の歴史で唯一と言ってよい宗教対立による本格的な弾圧となってしまいました。でも、このような動きは長続きせず、いつのまにか自然消滅してしまいます。


 明治政府としては最初は、開国して異国の一神教キリスト教が入ってきて国民がキリスト教徒になったらマズい、それぐらいなら神道を国教にして日本独自の一神教にしてしまえば、天皇の正統性も主張できるし国民を統治するうえで一石二鳥だ、という考えだったようです。


 でも、そもそも民衆がぜんぜん同調しなかったのです。民衆はこれまでどおりお寺でお葬式をしましたし、キリスト教も政府の脅威になるほどの広がりになりませんでした。また、明治政府は布教するカネもノウハウもなかったようで、国家神道をうまく布教することができなかったようです。笑い話ですが、布教する人材が足りなくて、講談師や落語家がかり出されたそうですから」


「(笑)それ笑えます」


「結局のところ、神道を国教にしなければ統治できないほど困った状態に国があったわけでもなかったし、宗教を政治に持ち込まなければならないほど民度が低いわけではなかったと言えるでしょう。結局、神道を国教にすることに失敗します。そして、政治と宗教は分離するという近代的な方向へ舵を切っていくのです」


「つまり、日本には一神教の需要もなく、供給するノウハウもなかったというわけですね」


「そのとおりだと思います。第2次世界大戦後の話ですが、神風特攻をやるような国は、きっとすごい一神教のカルトな国で、国家神道にはキリスト教のような上位下達のとてつもなくがっちりした組織があるに違いないとGHQが身構えて日本にやってくるのですが、そんなものはどこにもなくてずいぶんと拍子抜けだったようです。

チェーザレ 〜破壊の創造者〜 / 惣領冬実 監修 原基晶 - モーニング公式サイト - モアイ

Amazon.co.jp: チェーザレ 破壊の創造者(1) (モーニングコミックス) 電子書籍: 惣領 冬実, 原 基晶: Kindleストア

チェーザレ 破壊の創造者 / 惣領冬実/原基晶 <電子版> - 紀伊國屋書店ウェブストア

チェーザレ 破壊の創造者 - Wikipedia

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160606#1465209552
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160602#1464863761
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140611#1402483007