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物事の本質をつかむポイントは因果関係の見極めと問題設定にある【レノボ・グループ留目真伸社長×日本マイクロソフト平野拓也社長 対談】|外資系トップの思考力|ダイヤモンド・オンライン

外資系トップの思考力』で留目さんが指摘されていた「ロジカルシンキングだけでは本質から外れてしまうことがある」というお考えは、私自身も共感する部分でした。ビジネスにおいて意思決定をして組織を動かすとき、ロジカルシンキングで理路整然と思考のプロセスを整理して相手に伝えることはもちろん大切ですが、それ以外の、たとえば「まわりの人間をどのようにして巻き込むか」「その組織の文化をどのように作っていくか」といった人のエモーションに作用したり、組織のカルチャーを作り上げることのほうが実は重要なのではないかと、私も日頃から考えていたからです。

留目 どうしても過去の経験などを前提にして考えがちですが、本質をつかむには、それまでの先入観や経験をいったんすべて捨てて、ゼロベースで考えを組み立てていくことが必要です。そうすると、平野さんが本書で「インサイト(洞察、気づき)」と表現されていたような、目の前の事象の根幹にある本質的なことが見えてくるのではないでしょうか。


平野 ロジカルシンキングだけなら、一定の経験やトレーニングを積めば、誰でもできることですよね。


留目 たしかに、物事を論理的に考えることができる、いわゆる“賢い人”は自分のまわりにも大勢います。彼らはたいてい、同じデータを見たら、同じような解答を導き出します。


平野 だからといって、全員が全員、高いパフォーマンスを発揮できるかといえば、そうではない。結局、ロジカルシンキングが得意な人は、往々にして状況説明だけで終わってしまいます。「パフォーマンスが悪かったのは、こうした理由のためで……」と状況の分析は的確にできているのですが、本質的なことがまったくつかめていない。
大事なことは、なぜそういう現象が起こってしまったのか、そこにかかわった“人”の問題です。社員たちのモチベーションが上がらなかったのはなぜか。お客様がわが社の商品やサービスに興味を持ってくれなかったのはなぜか。自分たちの仕事や組織にかかわるすべての人――社員、パートナー、お客様が何を望んでいるのかというポイントが、仕事や組織をドライブさせる根幹にあります。そこをきちんと理解してつかんでおかないと、ロジカルな分析や説明も上っ面だけになり、問題解決や目標達成に何の役にも立たないものになってしまいます。


留目 物事の本質をつかむには、2つのポイントがあると私は思っています。ひとつは、因果関係を見極めて、何をどうすればどんな結果が出るのかを理解することです。ある面ではロジカルシンキングと似ているのですが、先ほど平野さんがおっしゃった「個々の人が何を感じて、どう動くか」という人のモチベーションのような、ロジカルシンキングだけではわかりづらい要因も含まれます。


平野 留目さんは『外資系トップの思考力』中で、ロジカルシンキングが前提にするような完璧に見える社会や組織はない、完全競争なんてないんだ、と強調されていました。


留目 そうです。世の中には、ふたを開けてみれば、不完全なことや論理的ではないことが山ほどありますよね。社会や組織も人の集団であり、みんながみんな完璧で論理的であることはあり得ないためです。そうした不完全さを前提にしたうえで、物事が動いている仕組みというか、人のエモーショナルな部分や組織のカルチャーまで含めた因果関係を洞察していかなければ、人や組織、事業をドライブさせる本質はつかめません。


平野 おっしゃるとおりですよね。2つ目のポイントは?


留目 もうひとつは、「どんな課題を設定するか」に本質にかかわる議論があると考えます。たとえば、われわれレノボはハードウェアの会社ですけど、パソコン業界という狭い枠組みの中だけで考えてしまうと、「パソコン業界で生き残るにはどうすればいいのか」という課題しか見えてきません。しかし、その問いに対する答えが、われわれのビジネスの本質なのかといえば、そんなことは決してない。目の前で起こっている現象にとらわれず、コンピューティングの未来にまで視点を広げて、「われわれのビジネスは何を目指しているのか」「何のためにわれわれは仕事をしているのか」というより根源的な問いかけに変えていかないと、本質は見えてこないのではないでしょうか。

平野 2つ目のポイントは、私も非常に重要だと思っています。米国本社のサティア・ナデラCEOは、ビジネスの話をするときも、必ず世界観の話からはじめるんです。哲学的な言い方に聞こえるかもしれませんが、「マイクロソフトがこの世界に存在している理由はどこにあるのか」「われわれの存在価値とは何か」という問いかけです。どのようなミッションをもって個々のお客様や社会全体、さらには従業員に対して、組織として貢献できるのか。その問いかけに対する答えが、会社のカルチャーを作り、自分たちが果たすべき役割、つまりこの世界におけるマイクロソフトの存在価値を定めていくのだと思います。

留目 ご存知のとおり、今のレノボのビジネスはIBMのPC事業の買収からスタートしており、組織の成り立ちからして多様性を含んでいます。そのため、会社のカルチャーも「社内の多様性をどのようにマネジメントしていくのか」ということを柱として醸成されてきています。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160606#1465209548