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ヤマザキナビスコから発売されていたリッツ、オレオなどのお菓子のライセンス契約がこの8月31日に終了し、9月からこれらの商品はモンデリーズ(旧ナビスコ)の日本法人が販売することになった。1970年から46年続いた契約が解消されたことで、ヤマザキビスケットと社名を変えたこの山崎製パンの子会社は、年間150億円の売上を失うことになる。


 同じく今年3月末には明治が55年にわたって育て、年間35億円を売り上げてきたうがい薬のイソジンのライセンス契約を、ヨーロッパのムンディファーマが解消した。薬局の店頭にはムンディ製の「イソジンうがい薬」と新製品の「明治うがい薬」が並ぶことになった。


 昨年6月には三陽商会が45年間育ててきたバーバリーがライセンス契約を打ち切り。三陽商会は4割の売上を失った。ライセンスを失って半年後から1年後に相当する2016年6月の中間決算で、三陽商会は連結で55億円の当期損失を計上した。


 いずれにしても、ライセンスを打ち切られた各社の業績の影響は大きいが、なぜそうなったかの事情と余波は各社とも少しずつ違っていて興味深い。

 そもそもライセンス契約を始める事情は、グローバルブランドを持つ海外の企業が日本で販売展開をする際に、自前で行うよりも販売力を持っている日本企業にライセンス提供して販売してもらった方が現地市場への浸透力が強いという経営判断で行われる。


 何十年か後になって「知名度が高まったからあとはもう自分でやりたい」というドライなライセンス契約打ち切りのケースも少なくないが、イソジンうがい薬の場合はやや事情が複雑だ。


イソジンのライセンスを打ち切ったムンディの事情は、主力商品である医科向けの麻薬性鎮痛薬を日本で本格展開することになったからというもの。これまで欧米で売れてきた同社の主力商品を日本の病院でも広めていきたい。そのために医科向けの販売組織を新規に作り上げたい。その視点で日本でのパートナーを薬店に強い明治ではなく、この分野に強い塩野義製薬に決めた。その結果、イソジンうがい薬のライセンスも明治から塩野義に移ることになったというのが裏事情だ。

三陽商会バーバリーのケースはライセンス解消の事例としては、かなり変わった、欧米的な経営判断で起きたケースだと言えるだろう。


三陽商会が50年以上にわたり育てたバーバリーは、日本市場で一般大衆に広く受け入れられる、コートのブランドとしては日本一メジャーなブランドに育つことになった。ところがこれはグローバルブランド戦略としては、ちょっと困ったことを引き起こしてしまう。


本場イギリスのバーバリーは大衆ブランドではなく、一部の富裕層に向けたハイエンドブランドなのだ。ブランド的には一般大衆が気軽に着てよい商品ではない。特にバーバリーはブラックレーベルなどの新展開によりさらにハイエンド向けにブランドの舵を切ろうとしている最中だった。


 これがルイ・ヴィトンのバッグのように、価格が高いのだけれどなぜか日本の一般大衆の女性がこぞって所有しているという状態なら、まだ我慢しやすかったかもしれない。ところが三陽商会バーバリーと英国のバーバリーは価格帯がちょっと違っていた。


私は英国製のバーバリーコートを一着、三陽商会製のバーバリーコートを二着もっているが、三陽商会製のコート二着を合計した金額の方が英国製一着よりも安かった。しかし品質はというと、これはあくまで主観だが、三陽商会製のバーバリーのほうが私は満足している。


 日本に中国などアジアからの観光客が増え、そこでは英国製のバーバリーよりも安く良い商品が手に入るとなると、これは困ったことである。だからバーバリーは日本の百貨店チャネルにあれだけ強い三陽商会とのパートナーシップを切って、極論を言うと「日本市場の売上を失っても構わないからグローバルブランドの質を高める」考えを貫きたかったようだ。

 ただ、これまでの一連の報道を見た限りでは、今回の契約解消はモンデリーズ側に計算違いがあったようだ。


ヤマザキビスケットはこれまでブランドとともに製造方法についてもライセンス契約を受けてきたため、同じ(酷似した)自社商品は作れない。そこで、ライセンス契約を解消しても、製品の製造だけはヤマザキ側が今後も請け負ってくれるとモンデリーズは考えていたようだ。そうしないとヤマザキ側で機械や工場の人員が余剰してしまう。欧米流の計算でいえばそうなると踏んでいたのではないか。


ところがそれをヤマザキ側は断った。結果としてオレオは中国の工場、リッツはインドネシアの工場で製造し日本に輸入することになる。私の関心事としては、中国製になったオレオが日本市場で売れるかどうかだ。


 さらにヤマザキビスケットはリッツの対抗商品として、八角形の新デザインのクラッカーであるルヴァンを発売する。ここでどちらが日本市場の主導権をとるかも興味深い。


 というのもリッツクラッカーは一流ホテルで行われるパーティで使われるカナッペ用など、家庭用ではない定番需要がそもそも大きい。ブランド力よりも販売力が重要な側面の大きい商品だ。山崎製パンという日本最大の販売力を持つ企業グループへのライセンスを打ち切ったことで、欧米的な計算以上のダメージを受ける可能性があるのではないかと私は予想している。

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