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JPモルガン・チェース最高経営責任者(CEO)のジェイミー・ダイモン氏が14日の電話会議でした発言について、「反愛国的」ではないかという批判や逆に支持する声がわき上がった。ダイモン氏の発言はこうだ。


  「米国民として世界を旅していて米国が抱える情けない問題について耳にすると、なんだか恥ずかしい気持ちになる。米国民はある時点で、皆で問題を解決しなければならない」


  正しい文脈で読み解くと、ダイモン氏のコメントは米国と世界の経済を取り巻く4つの現実を指摘している。


  1.ワシントンでは政治的抗争が長年続き、不必要に不透明感を高め賢明な経済政策の実践は遅れた。これが成長に悪影響を及ぼすと同時に成長の恩恵を一部に偏らせ、多くの米国民から望ましく可能な水準の繁栄を奪ってきた。


  2.ワシントンの機能不全にもかかわらず米経済は年率1.5−2%の成長を遂げ続けてきた。これは民間部門の底力を示すものだが、成長の低位安定が長引けば長引くほど、潜在成長力と将来の繁栄への下押し圧力は強まる。


  3.相互に絡まり合った世界経済の中での米国の役割と重要性から、世界の他の国・地域、特に米国の友好国・同盟国は米国の状況を、単なる好奇心ではなく、困惑と懸念を持って見つめるようになった。米国は今でも世界経済の成長エンジンで、金融安定の最も肝心な要だ。


  4.米国の信頼性と指導力は今も、世界的政策協調の最も重要な鍵だ。これがなければ、世界経済は分裂に向かう圧力の高まりに起因する不透明と困難にさらされる。


  米国政治の機能不全がもたらす害について外国の企業や政府首脳が懸念を表明するのと、最も影響力があり尊敬される米企業経営者がコメントするのでは全く違う。ダイモン氏がこうした発言をしたことで、米国民の心に過去に失われた機会と、失いつつある国際的な影響力の両方について警報が鳴り響いた。


  発言のタイミングも大きな意味を持つ。米国では(税制改革やインフラ投資など)成長促進に向けた法案の策定と通過が遅れている。同時に、連邦準備制度による成長下支え政策の効果も弱まりつつあり、米経済の下振れリスクは高まっている。最近の20カ国・地域(G20)首脳会議が示したように世界の政策協調がうまくいっていない状態では、米国の減速による経済的、政治社会的影響は大きくなるだろう。


  ダイモン氏の発言を「反愛国的」と批判したり、フラストレーションから出た不運な暴言と片付けてしまったりするより、分裂と脱線が続き経済運営という重要な責務を果たせていないワシントンへの警鐘と捉えることが、米国の国益となるだろう。


原題:Jamie Dimon Is Right to Raise the Alarm: Mohamed A. El-Erian(抜粋)