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 これをみてもわかるように、かつてイオンは、売上高の最も大きなGMSで556億円の利益を稼いでいました。ところが、その5年後の17年2月期には、GMSの利益が24億円にまで縮小しているのです。


 ここで、注意を要することは、イオンのGMSは売上高を2兆6144億円から3兆122億円にまで伸ばしていることです。つまり、この5年間で売上高を15パーセント伸ばしたにもかかわらず、利益額が95パーセントも縮んでしまっているのです。

 その一方、総合金融の利益額は220億円から619億円となっており、大幅に業績を伸ばしています。つまり、この5年のうちGMSでは大幅に利益を減らした一方で、総合金融では大幅に利益を増やしたということです。

 ここで問題になるのは、総合金融におけるイオンの出資比率です。総合金融における中核となっているのは、イオンフィナンシャルサービスという会社ですが、この会社にはイオンは100パーセント出資しているのではなく、半分程度しか出資していません。ということは、イオンフィナンシャルの稼いだ利益のうち、半分しかイオンに帰属されないということです。


 そのため、企業集団全体の業績を示す連結損益計算書では、いったんすべての利益を合算するような表示をしつつも、最終的に子会社の利益のうち、親会社に帰属しない部分を「少数株主利益」という項目で削除する計算手続きが行われています。


 つまり、イオングループでは業績が落ち込んだ会社の多くが100パーセント出資であったのに対し、業績を伸ばした会社の多くが半分程度の出資だということです。業績を伸ばしたグループ会社の利益が丸々イオンに帰属するのではなく、その半分しか帰属しません。そのかわり、業績を落とした事業のロスなどは、丸々イオンに帰属してしまうのです。その結果、イオンの当期純利益が5年前は745億円もあったのに、直前期には112億円まで大幅にダウンしてしまったのです。


 筆者は、このデータをみて「これは、きつい」と嘆息せざるを得ませんでした。イオンはGMSで3兆円を超える売上を上げながら、その事業の営業利益がたったの24億円程度になっていたということですが、これは巨大なビジネスを営みながらも、ほとんど利益を獲得できていないことを意味します。これを立て直せないと、将来はエライことになってしまうのです。

 ここに掲げたのは、フジ(四国)、ヤオコー(埼玉)、平和堂(滋賀)ですが、いずれも業績の上昇傾向が見受けられます。これをみても、スーパー業界全体の業績が悪化しているのではないことがわかります。

 では、イオンはこの経営難をどのように克服していけばよいのでしょうか。


 実はイオンに先行して、凋落から復活を果たした先例があります。それが、近年のヤマダ電機です。

 このとき、ヤマダの創業者である山田昇氏は、5年前に社長を退いていましたが社長に復帰し、全取締役を降格させる荒療治で再生に取り組みました。不採算店を57店舗閉鎖し、そのいっぽうでアウトレット店の拡大など店舗の改革を断行し、規模の拡大と安売り一辺倒の経営姿勢から利益重視の体質へと転換を進めたのです。


山田昇氏(以下、山田) 家電事業に特化していえば、日本は欧米や中国と比較して、もっともネットおよび国内の社会的変化の影響を受けています。日本は歴史上経験したことのない少子高齢化が進行しており、その上アマゾンなどのネット店舗が大変な勢いでリアル店舗の商圏を駆逐しようとしています。ここで改革を推進しなければ、リアル店舗保有はビジネス上で大きな不利になります。


 ヤマダ電機の強みは、配送や家電の設置などで家の中に入り、お客様の家族構成や所得状況、家電設置状況、職業などを把握できることです。それにより、お客様の情報を“見える化”することができます。


 また、ネット店舗ではプレゼンテーションができません。ヤマダ電機では約2万人の従業員が働いており、それぞれが高いプレゼン能力を持っています。今はメーカーも「ネット」と「家電量販店」というふうに自社の製品の棲み分けを行っています。


 家電量販店は、メーカーに代わってお客様にサービスを行い、買い換えサイクルを伸ばしています。特にヤマダ電機は、リアル店舗ならではのサービスを行っています。


 リアル店舗とネット店舗の競合について、今はやや落ち着いているのではないでしょうか。しかしながら、ここで何もしなければ、来店するお客様の数は減少します。


 そこで、新規ビジネスとして、リフォーム事業、スマートハウス事業、金融サービス事業に加え、「インテリアリフォームYAMADA 前橋店」をオープンさせました。同店は家電との親和性が高い生活雑貨や家具、リフォーム、住宅に特化させており、住宅および住宅関連機器にかかわる商材全般を提供する体制を整えています。

山田 投資家のみなさんからすれば「よけいなことをやっている」という感じでしょうが、リフォームだけでなく、ホームファッションや家具、インテリア雑貨をトータルで提案すると共にカフェを設けており、家族連れや女性の方も気軽に来店していただける店舗になっています。

山田 家電と家具は相性がいいのです。ニトリも、家具だけでなく生活用品である家電を扱って業績を伸ばしています。今回の店舗は「ニトリのモノマネ」などと言われますが、それは違います。繰り返しになりますが、ヤマダ電機は「住まいに関する家1軒まるごとのサービス」を提供します。その一環が、この新業態です。そこは強調したい点ですね。

――そこで、一連の構造改革の手応えはいかがですか。


山田 成果が顕在化しつつありますが、構造改革は道半ばです。大切なのは、現場主義に基づいた構造改革です。真に現場主義に徹して、やるべき方針の実行を徹底することで改革は達成できると確信しています。


 しかし、これは私がオーナーだからこそできることです。雇われ社長は1年や2年単位での短期的成果が求められますが、オーナーは長期スパンでの経営が可能です。

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