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 相次ぐ不祥事で日本の主要企業の経営に深刻な問題が生じていることが露呈した。最新の例となった 神戸製鋼所 は8日、アルミ・銅製品の品質データを過去1年間改ざんしていたことを公表した。数日たたないうちに同社はもっと広範囲に問題が起きていたことを認めた。不正は多数の子会社で見つかり、10年前から始まっていたという。信じられないかもしれないが、これは日本で企業統治コーポレートガバナンス)が着実に進行している証拠だ。


 安倍晋三首相率いる政権が2014年に「スチュワードシップ・コード」を導入したことを思い出してほしい。これは機関投資家が積極的に経営者を監督する役割を果たせるようにするものだ。翌年に適用が始まった「コーポレートガバナンス・コード」は、取締役会が社外のメンバーを迎え、透明性を高めることを要請している。


 いずれも自主的な規範ながら、政府は各企業にこれを守るよう脅しをかけた。それが実際に功を奏した。日本企業の平均でみると自己資本利益率ROE)は8.5%で、純利益の33%を配当に回している。これに対し、当初の目標はそれぞれ8%と30%だった。株主還元策である配当金と自社株買いは特に劇的な伸びを見せた。


 それでも日本企業は国内総生産GDP)の半分近くに相当する19兆ドル(約2100兆円)の内部留保を抱える。企業の収益性の向上もあり、企業が保有する現金は年5%のペースで増えている。


 スチュワードシップ・コードは今年見直され、さらに厳しい内容になった。来年にはコーポレートガバナンス・コードの改訂が予定される。それによって経営陣は株主への現金還元を増やすことを強いられるはずだ。そうした見通しが現在の日本株の強気相場を支えている。


 だが全ての企業が変化について行けるわけではない。神戸製鋼所は日本企業の中で長らくROEでは後れをとっていた。不正行為の詳細はまだ明らかでないが、コスト削減と収益増への圧力が高まり、不祥事を引き起こす原因となったかもしれない。恐らくは経営陣が不可能な目標を現場の従業員に課し、そのため従業員は結果をごまかしたのだろう。同社は過去2年連続で赤字に陥り、資本コストが上昇していた。株主は経営陣に変革を求める圧力をかけ始め、同社が買収の標的になる可能性が取りざたされた。


 日本の旧来のシステムの下で同社が経験しただろうやり方とは大きく異なっている。かつては政府が銀行に経営不振に陥った企業への融資を続けるよう促し、万一破たんすると救済策が講じられた。株主は経営陣に口出しする権限がほとんどなく、株主の利益は後回しにされた。敵対的買収など聞いたことがなかった。


 日本のコーポレートガバナンス改革は、経営幹部の間に利益拡大への意欲を生む期待通りの効果を上げている。不祥事がもう隠ぺいされないという事実は励みになる。しかし取締役会はそもそも不正を事前に防ぐメカニズムを導入する必要がある。


 ここに次の段階の改革へのヒントがある。すなわち、取締役会メンバーの過半数社外取締役とする(現行ルールでは2人)ことや、取締役としての訓練および説明責任を義務づけることなどだ。一連の不祥事に関与した日本企業は代償を支払わねばならないが、不祥事で日本企業の株主対応が改善するなら、有益な効果があったことになる。