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このままでは米中両国は、古代ギリシャの歴史家トゥキディデスが指摘した致命的な罠に陥る恐れがある。2500年前のペロポネソス戦争を記録したトゥキディデスは、「アテネの台頭と、それによってスパルタが抱いた不安が、戦争を不可避にした」と書いている。


 この考察は、その後の歴史で繰り返される危険なパターンを言い当てている。私がハーバード大学で指導する「トゥキディデスの罠プロジェクト」では、過去500年の歴史を調べ、新興国が覇権国の地位を脅かしたケースを16件見つけた。よく知られるのは、100年前に工業化して力をつけたドイツが、当時の国際秩序の頂点にいたイギリスの地位を脅かしたケースだろう。その対立は、第一次世界大戦という最悪の結果を招いた。このように戦争に行き着いたケースは16件の対立のうち12件で、戦争を回避したのは4件だけだった。現代の米中関係の先行きを考えるとき、あまり励みになる数字ではない。


 本書『米中戦争前夜 新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ』は、中国そのものではなく、中国の台頭が、アメリカと国際秩序に与える影響をテーマにしている。第二次世界大戦後、アメリカ主導でルールに基づく国際秩序が構築された結果、70年にわたり大国間で戦争のない時代が続いた。現代人のほとんどは、戦争がない状態が普通だと思っている。だが、歴史家に言わせれば、これは史上まれにみる「長い平和」の時代だ。そして今、中国はその国際秩序を覆し、現代人が当たり前のものとして享受してきた平和を、当たり前でないものにしようとしている。


 2015年の米中首脳会談で、バラク・オバマ米大統領と中国の習近平国家主席トゥキディデスの罠についてじっくり話し合った。オバマは、中国の台頭が構造的ストレスを生み出してきたが、「両国は意見の不一致を管理できる」と強調した。また両者の間で「大国が戦略的判断ミスを繰り返せば、みずからこの罠にはまることになる、と確認した」と習は明らかにしている。


 そのとおりだ、と私も思う。米中戦争は今ならまだ回避できる。


 トゥキディデスも、アテネとスパルタの戦争も不可避ではなかった、と言うだろう。「トゥキディデスの罠」は、運命論でも悲観論でもない。メディアや政治家のレトリックにまどわされず、米中間に巨大な構造的ストレスが存在することを認め、平和的な関係構築に努めなければならない、という警鐘だ。

 それらの事例を踏まえ、米中の場合も全面戦争になるときは一気にエスカレートして起こる、として以下5つのシナリオを挙げています。


1.海上での偶発的な衝突
2.台湾の独立2
3.第三者の挑発
4.北朝鮮の崩壊
5.経済戦争から軍事戦争へ


 つまり、1.(尖閣問題等)や 4.(北朝鮮)などが起こった場合は、日本も否応なく巻き込まれることになるでしょう。世界のパワーバランスの変化が日本にどのような影響を与えうるか、考えてみるうえでも示唆を与えてくれます。

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決定の本質 - Wikipedia

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『国際秩序』(ヘンリー・キッシンジャー)

P275

 このドクトリンを提起するいっぽうで、建国の父たちは、ヨーロッパの力の均衡を理解し、新生アメリカに有利なようにそれを操るだけの見識があった。イギリスから独立する戦争ではフランスとの同盟を取り付けたが、その後、フランスが革命に着手して、アメリカに直接の利害がないヨーロッパ改革に乗り出すと、結びつきを弱めた。ワシントン大統領は一七九六年−−−フランスの革命戦争のさなか−−−の辞任挨拶で、アメリカ合衆国は「外国世界のいかなる部分とも恒久的な同盟を結ぶのを避け」、その代わり「重大な非常時には一時的な同盟を大過なく信頼するように」と助言した。アメリカの相対的な優位を利用するにあたって、ワシントンは倫理の表明よりも抜け目ない判断を重んじた。広い海に護られている新興勢力のアメリカが、力の均衡をめぐるヨーロッパ大陸の争いに巻き込まれるのは無用なことであり、かつまたそのための資源もなかった。同盟を結んだのは、国際秩序の概念を護るためではなく、明確に打ち出された国益に役立つからだった。ヨーロッパで均衡が維持されていれば、アメリカは策動の自由を温存し、国内を強化する戦略によって得るところが大きくなる−−ーこの行動方針は一世紀半後に独立した旧植民地国(たとえばインド)に実質的に受け継がれた。
 この戦略は一八一二年のイギリスとの短い戦争のあと、一世紀にわたって広く行き渡り、アメリカは他の国々の立場では考えられなかったようなことを達成した。外交政策では、海外への進出をできるだけ抑えるという消極的な目標に的を絞り、国内の力を蓄積するだけで、大陸規模の国土を持つ強大な勢力になったのである。

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