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 国内と海外の両方やります。今後、日本の法人税も下がってくるし、工場も自動化されてくるので、なんでもかんでも海外に出ればいいという時代ではありません。やはり高度なノウハウを持っている製品は日本で作るのが正しい方向でしょう。


 また、われわれは日本で生まれた企業なので、日本にも投資して日本に貢献しなければいけないという考えもありますし、リスク分散の観点もあります。


 海外進出については、これまで色々な国で工場を作りましたが、顧客の近くで生産するという基本で海外に展開しています。中国の製品は中国の顧客に供給し、ベトナムの工場は、世界に供給する目的で進出します。部品の会社ですから、お客さんの近くで製品を作るのが一番いいんです。

 為替の円高や人件費を理由に海外進出した会社もあるかもしれませんが、うちは円高や人件費のために海外に出て行ったことはないです。


 M&Aだって為替を理由に、「円高だから買収しよう」という発想を持ったことは一度もありません。その時に必要な会社なら、円高でも円安でも買ってきました。

 まあ、われわれはどんどん成長しているので、それに伴う人材を確保できるのかが最大のリスクですね。人材を集めないで会社を大きくすると膨張になってしまいます。会社を大きくするのは簡単で、会社を買えばいいだけ。でもそれでは経営に失敗します。成長にふさわしい人材が必要なんです。


 つい最近もすごくいい会社があって買おうとしたんですが「ちょっと待て」ということで止めました。なぜなら、その会社を買収しても、一体誰を派遣すればいいのかイメージできなかったからです。


 とても良い会社で、本当に買いたかったんですけどね。でも、売り上げ規模が3000億円くらいだったので、そうなると十数人のマネジメントが必要になった。まずは、その人材を集めてからでなければ、その会社は買ってはいけないということです。


 その会社を買ってしまえば、簡単に売上高は3000億円が増えます。でも、日本の会社ではそういうことをやった結果、上手く行かずに減損して大赤字になるというケースがあるので、あくまで身の丈に応じた買収をしなければいけない。そのためには、人材が集まるかどうかが最大の鍵なんです。

 18年には18歳の人口が大幅に減るので、高卒者が減るという問題があります。ということはその4年後には、大卒者ががたんと減るわけです。


 われわれにとっては、モーターに関わる研究者が全く足りない。集めても集めてモーターの専攻者が日本にいないんです。


 そこで、私は「永守財団」を作って永守賞で世界のモーター研究者を表彰して、モーターを研究する若手研究者に補助金を出しています。


 京都大学も20年前にモーターの研究講座がなくなったので、私は講座を寄付しました。研究者がいなくて困っているので、将来はその教え子さんを頂けませんかということをやっているわけです。


 しかし、それでも人材は足りません。来年は500人の新卒者を採用しますが、20年にはおそらく日本だけで1000人くらいの大卒者を集めなければならないほどのペースで成長しているので、まったく足りないわけです。


 だから私自身が来年から京都学園大学で理事長をやることにしました。そこに工学部を新設してモーターに関連する学科を新設します。モーター制御やAI(人工知能)など自分のところに欲しいエンジニアを育てる学部を作って、その学生が4年後に卒業するときにわれわれが採用したい。


 もう「人材不足だ、政府が悪い、世の中が悪い」と嘆いている暇はありませんからね。日本電産が欲しい人材は、自分たちで大学から育成することにしました。


 さらに、2018年には(京都府精華町生産技術研究所の建物がオープンします。ここに将来的に1000人の研究者を集めます。


 売上高は20年に2兆円にして、30年に10兆円にするですから、そのためのキーは人材です。そうやって今から10年先、20年先の人材を確保するのです。

――最後に2018年の日本経済、日本企業の見通しをお願いします。


 もはや日本全体を平均値で語る時代ではないでしょう。いい会社はすごくよくなって、ダメな会社はさらにダメになる。経営力のあるところはよいが、それがないところは、競争に負けて悲惨なことになるでしょうね。技術革新に乗れない会社は企業競争では非常に厳しい年になる。特に中国との競争では、技術的に優れたものを作っていなければ価格競争になります。


 どんな業界でも、昔は上位3〜4社くらいは利益をあげていたものですが、今では業界ナンバー1がほんとんどの利益を持って行ってしまう時代です。2位ですら赤字を出している業界がある。僕は何事も厳しいという言い方は好きじゃないんだけど、競争は激化することは当たり前になるでしょう。


 1年はあっという間ですが、その間に起こることはたくさんです。周囲の環境は、北朝鮮や米国のリスクもありますが、それを言い出したら経営などできません。自分たちの会社は自分たちで守る。そういう経営をするしかないでしょう。

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