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多田 宮内さんはすでに後継者へ経営を引き継がれている実績があります。今、日本では事業承継が大きな問題となり、事業承継や幹部育成に課題を持つ企業も多いなかで、どのように進めるのがいいとお考えでしょうか。


宮内 そもそも、幹部の育成はできるものなのか。これはうまくいくかどうかわからない話です。むしろ、幹部を「育成する」という見方ではなく、育った人がきちんと出てくる組織であることが大事だと考えています。


多田 作物でいえば、特定の苗を伸ばそうとするのではなく、しっかり実ったものを収穫できるかということでしょうか。


宮内 ええ。会社が社員を「育成」することが企業の責任なのかは疑問です。あくまで会社は一人ひとりの能力をアウトプットするところであって、教育やインプットをするところではありません。結果的に幹部が育成される環境が整っていればいいのだろうと考えています。


 理想は、社員が100%の能力を発揮できるような組織をつくること。「人材の総和が最も大きくなる」ようにできれば、人事がうまくいっている証拠といえます。もっとも、言うは易く行うは難しではあるのですが。

多田 組織を活性化するために重視されてきたことは何でしょうか。


宮内 組織の活性化には、「新陳代謝」や「若返り」といったことが言われがちですが、私は「若ければよい」と思ったことはありません。ある程度の経験は必要でしょう。だからこそ、組織の若さを重視するよりも、社内にさまざまな意味での壁や天井をつくらないことが大事だと思っています。

多田 組織の活性化だけでなく、適切な配置や登用などにも人事の手腕が大きく影響します。「これからの人事」に求められるものをどのように考えますか。


宮内 一言でいうならば「テーラーメイド型の人事」です。日本の戦後経済を牽引してきたのは製造業でしたが、それを支えたのが「良質で大量にものを作ることができる組織」でした。この組織を機能させるためには「同質の人材」を配置しなければならなかったわけです。それが工業化社会です。


 しかし、その社会は過ぎ去り、今は組織の一人ひとりが知恵を出し合い、常に変化する世の中に柔軟に対応しなければ受け入れられない時代になりました。もはや、規格商品や規格人材では通用しない世の中です。そのような中で、会社は社員個々の考え方や資質をしっかり把握し、能力をつなぎ合わせて新しい価値を生み出していくことを思考していかなければならないのです。


 ただ、今の採用を見ていると、そのあたりがいまだにずれているなと思うことがあります。


多田 採用もさることながら、人事の役割や使命が変わりつつあるのですね。


宮内 ともすれば人事部に採用を任せるのではなく、各セクションに委ねたほうが、人材の専門性が把握しやすく、採用の効率も良くなります。


 旧来型の人事組織、つまり「大学何年卒だと給与がいくらで、何年勤続すれば肩書きを与える」といった箱をつくり、その箱の中から優れていると思われる人材をピックアップしていくやり方は、真の専門性が低いわけです。


 これからは箱をつくるよりも、一人ひとりの人事、一人ひとりの採用、まさにテーラーメイド型の時代になってきたと感じているのです。日本の新しい企業社会にあった人の採用、活用を、時代の変化とともに人事が見つけていかなければならない。革新はどのセクション、人事からでも起こせます。


 しかし、下手をすると人事が足を引っ張る部門になりかねない。こんな人は採れないとか、この若さでこの処遇はできませんとか、いわゆる箱に入れたがったり、箱を守りたいと思ったら足を引っ張る存在になります。

多田 宮内さんが社長に就任されたのが45歳です。もともと創業時は13人でリース事業を立ち上げて、そこから3万人を超えるグループになるまでを見てこられました。ここまでに変わらずにきたもの、変えてきたものがあると思います。この2つをどのように捉えていますか?


宮内 振り返ってみれば、初めから原理原則をつくったことはよかったと思います。そこはずっと変わらずにきました。


 たとえば、「自分の足で立つ」や「新しい価値を創造する」というような原理原則があるから、オリックスは常に新しい領域にチャレンジしていくという雰囲気が社内にずっとあったように思います。

宮内 極端にいえば、新しいことをしなければ「ご飯が食べられなくなる」、「会社が伸びなくなる」、という切迫した思いが、常にチャレンジしていくことの原動力だったと思います。


多田 新しい領域へ進むときに、方針はありましたか?


宮内 少しでも「わかるところ」へ進むことでしょうか。たとえば、既存事業の周辺分野であれば、半分わかって、半分わからない世界です。「わからないところ」での成功率は決してよくない。言ってしまえばギャンブルと同じですから、全く未知の世界に行くことはしません。

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