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 どういうことかと言えば、私が最初に赴任した学校では、校長の最大の関心事は、窓のブラインドがきれいに同じ高さにそろっているか、教室内が静かか、バラの花壇に足を踏み入れる者はいないかということだったのです。指導主事はといえば、とにかくマイノリティの人々の感情を害するようなことが行われていないか、すべての書類がちゃんと期限どおりに提出されているか、そんなことばかりを気にしていました。管理職の職務のなかで、子どもの教育問題はまるで隅っこに追いやられていたのです。


 はじめ私は、この学区だけが特殊なのだろうと割りきっていました。

 政界、法曹界、教育界、産業界――すべての階層社会のすべてのレベルで無能な人間ばかりを目の当たりにした私は、きっと人間の配置をつかさどるルールに何らかの問題があるに違いないという仮説を立てるにいたりました。こうして私は、人々がどのように階層社会を昇っていくのか、そして昇進した彼らがその後どうなるのかを解き明かす研究に本腰を入れるようになったのです。