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元号はこれまで、中国の「四書五経」などの書物を出典元として決められてきた。
そして的場氏が引き継いだ時点で、政府の依頼を受けた中国古典や東洋史などの専門家3人から案が提示されていたという。


しかし、そこに問題が起きた。
的場氏が担当となってから、そのうち2人が相次いで亡くなってしまったのだ。


いくら陛下の存命中に、あらかじめ次の元号案を検討しておくとはいえ、正式には陛下の崩御を受けてから政府が専門家に依頼し、正式に選定するという形がとられる。
それだけに、実際に元号の案が採用されるには、案を提示した専門家が、正式選定の時点で存命であることが条件となるのだ。


そこで的場氏は、新たに漢学や東洋史、国文学など4人の専門家に元号の考案を依頼した。

学者や専門家の世界は富士山なんですよ。
ひとりひとり独立した峰で、だから大変難しい先生方なんですよ」


そして専門家からようやく提示された元号案をめぐっても苦労は絶えない。
悩みの1つは専門家の案が必ずしも政府の条件に合わないことだ。
元号の選定にあたっては、政府の公式文書で、6つの条件が示されている。


1. 国民の理想としてふさわしいようなよい意味をもつ
2. 漢字2字
3. 書きやすい
4. 読みやすい
5. これまでに元号やおくり名として用いられていない
6. 俗用されていない


このうち、3と4がまずネックになったという。


「富士山みたいな先生に『平易なことが条件』といくら言っても、非常に難しい案が出てくる。
読みやすい、書きやすいっていうことを入れるのは先生方にも極めて失礼なことなんですね。それで非常に苦労した」


さらに、6の「俗用されていない」、つまり「一般的に使われたり、固有名詞などとして使用されていない」という条件にも苦労したという。


「日本、朝鮮半島、中国の村の名前まで調べましたよ。
さらに中華料理店とか焼肉店とか一般企業の名前にあるかないかも調べてみる。すると結構あるんですよ。
それで、『先生これは勘弁してください』っていうことになるとやっぱり不機嫌になられますよね」

そして的場氏が依頼した専門家の案の中から、新元号候補は3つに絞られた。
東洋史学者・山本達郎氏の「平成」、儒学者宇野精一氏の「正化」、中国文学者・目加田誠氏の「修文」だ。


「平成」については、的場氏が、元号の考案を依頼していた山本氏に案を催促したところ「学士院の会議の後に密かに会おう」と言われ、その場で「平成」という案を示されたという。


「非常にいい案だなと、内外にも天地にも平和が戻る、平和が続くという案ですから。
『成』という字は初めて使ったんですけれど、いい案だな、催促するもんだなと思いました」


その場で山本氏は、「平成」の出典の1つをめぐって、他の学者から「学説として違う」という異論が出る懸念も示した上で「意味がよければそれでいいんだよ」と伝えたという。

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