ゴルバチョフ氏「米寿」 プーチン氏祝賀、映画出演、米国批判・・・なお存在感 https://t.co/mo24LRFTt6
— 共同通信公式 (@kyodo_official) March 7, 2019
ロシアのプーチン大統領はゴルバチョフ氏の誕生日に当たり「現在も貴兄が国の諸問題を傍観することなく、重要な国際問題を巡る識者の議論に積極的に参加し、オープンで建設的な対話構築に貢献されていることを喜ばしく思います」との祝電を送った。このほか、東西ドイツ統一という歴史的偉業に果たした役割に対しゴルバチョフ氏を「恩人」ととらえるドイツのマース外相も「グラスノスチ(情報公開)とペレストロイカの父であるゴルバチョフ氏は、冷戦に終止符を打ちドイツ統一に多大な貢献をした」と祝福した。
プーチン氏の祝賀は毎年恒例となっている。プーチン大統領への権力集中や強権的な政治手法について一時、批判的な立場をとってきたゴルバチョフ氏だが近年は、「ロシアを崩壊から救った人物」と評価したほか、外交政策ではクレムリンの方針を支持することも多い。
自身とレーガン米元大統領との間で調印した中距離核戦力(INF)廃棄条約について、トランプ政権が破棄通告したことに対し、ゴルバチョフ氏は2月13日付のロシア紙ベドモスチに寄稿。「米国の狙いは軍事分野における制限を取り除き自らの絶対的優位を確立することにあり、世界の戦略図を不安定にして新たな軍拡を招く結果につながる」と米国を厳しく批判した。
プーチン政権を批判し、何度もノーベル平和賞候補にもなったロシア紙ノーバヤ・ガゼータも電子版で誕生日を祝う多数の読者の声を紹介。ソ連に言論の自由を与えてくれたゴルバチョフ氏に感謝する声を伝えた。同紙はゴルバチョフ氏が大株主を務めている。
しかし、こうした声は一部で、大多数の国民の「ゴルバチョフ評」は悪意に満ちたものであることは否定できない。独立系世論調査機関「レバダ・センター」が2016年2月に行った調査によると、ゴルバチョフ政権時代に「否定的側面より肯定的側面の方が多かった」と答えたのはわずか12%にすぎず、67%がマイナス面の方が多かったと回答。この調査では、多数の国民を粛正・弾圧した独裁者スターリンを肯定的に評価した人が40%、「停滞の時代」の指導者とされるブレジネフ共産党書記長についても51%が評価するなど「ソ連回帰」の潮流を浮き彫りにした。
誕生日のSNSでのコメントでは「裏切り者」「ソ連を売り渡した」「西側のスパイ」など、ゴルバチョフ氏をののしるコメントが相次いだ。「ソ連を崩壊させた」「軍縮交渉やドイツ統一での西側への過剰な譲歩」「保守派と改革派の間での優柔不断」「経済破綻」など、ペレストロイカ時代の混乱の責任を同氏に押しつける論調がロシアでは根強い。
残念ながらゴルバチョフ氏と同じ激動の時代を生きた同時代人の多くが既に死去した。ともにペレストロイカを推し進めたシェワルナゼ元外相、ヤコブレフ元政治局員、政敵だったエリツィン初代ロシア大統領、国外ではサッチャー英元首相、コール・ドイツ元首相、レーガン、ブッシュ両米元大統領(シニア)らはもうこの世にいない。その意味では、ゴルバチョフ氏はペレストロイカやドイツ統一、ソ連崩壊など二十世紀の歴史的瞬間について証言できる数少ない「生き残り」なのだ。現在は国際平和の推進や環境問題に取り組む「ゴルバチョフ財団」総裁として活躍する同氏が万が一にも、この世を去ることがあれば、一つの時代が終焉したことを表すものになるのではないか、とつくづく感じる。