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 一茂の大活躍ぶりは、テレビが力を失ってきたことも後押ししている。そもそも若者のテレビ離れは前々から言われていたが、今や芸能人もテレビ離れ。テレビで顔さえ売れれば、あとはYouTubeやインスタで好きなように稼ぎます、というタレントも多い。テレビなんて踏み台、とあからさまに扱われる時代だ。そんな不遇のテレビ業界に必要なのは、手っ取り早く視聴率を稼げるタレント。なおかつ、批判も一手に引き受けてくれる芸能人の存在である。
 不倫した芸能人、乱暴な女性タレント、無礼な若手アイドル。彼らの話題になれば一気に視聴率は稼げる。番組の内容より、タレントが問題なのだと批判の矛先もかわすこともできる。そういうテレビの抱えたズルさや弱さを、ズバッと解決してくれる筆頭が一茂だったのだろう。
 現在では朝のワイドショーをはじめ、自身がMCを務めるバラエティ番組も持つ売れっ子だ。どちらでも、歯に衣着せぬ発言がたびたび取り上げられている。同じく有名2世の一人である、石原良純との共演が多いのも興味深い。奔放な発言と、面と向かって批判しにくい堅実な家柄は、やはり共通している。
 最近では内閣や都知事にも、窮状を訴える国民の気持ちがわかっていないと切り込む一茂。「よくぞ言った一茂」とやんやで迎える風潮もある。でもそもそも、一茂本人は庶民には真似できないような優雅な暮らしぶりを送ってきた。どの口が言う、という怒りよりも、一茂がこんな腹芸ができるようになったとは、と驚くばかりだ。まあ、政治家も芸能界同様に、ある種人気商売。国民的大スター・長嶋監督の機嫌を損ねることはしたくないだろう。むしろ政治家側が反撃できないという弱みをわかった上で、一茂がプロレスを仕掛けているとしたら。もはや彼は「国民的バカ息子」ではない。怖いほどの賢さを身につけている。
 かつて一茂は、毎朝“死の瞑想”を続けていると明かしていた。殺されて一度死ぬイメージを持つことで、生きていることに感謝できるからだという。長嶋茂雄は、「長嶋茂雄であり続けることは、結構苦労するんですよ」と語ったことがあるそうだが、長嶋茂雄の息子であり続けることもまた、相当に苦しんだはずだ。
 巨人の星ならぬ、2世の星となった一茂。親の七光りとはまた違う光で、これからも悩めるテレビ界を照らし続けてくれるのか。バカ息子気質は永久に不滅だと、一茂が演じ続けてくれるかどうかにかかっているだろう。

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「自己は自己を否定するところにおいて真の自己である」

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