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大手銀行の再編という意味では、三菱UFJは三菱、東京、三和、東海、三菱信託、東洋信託、日本信託という実に7行が参画している。一方の三井住友は住友、三井、太陽神戸の3行のみです。金融は規模の利益が出るビジネスですから、三菱UFJは圧倒的に有利な体制を構築していたといえるだけに、そこを三井住友が抜いた意味は金融史的にも大きいですね。

もともと三菱UFJは中心となっている「三菱銀行」の伝統が色濃く、三井住友は「住友銀行」のDNAが、しっかりと生きていると思いますが、そうしたカルチャーの違いが経営に与える影響をどう分析するのか。みなさんは、それぞれ所属しているメガバンクがありますが、匿名性を保つために、自分の組織のことでも他のメガのように話して下さい。

三菱銀行は伝統的に経営企画部が強い。経営企画部はいわばトップの知恵袋で、経営計画を立案するだけでなく、当局(大蔵省や金融庁)や銀行間(インターバンク)での情報のやり取りをする渉外機能も持っています。まさに経営トップの頭脳でもあり、目でも耳でもあるわけです。

三菱の代々のトップは、経営企画部長を経験した人が大半で、経営企画部が組織の要となっているわけです。なので、三菱の場合は誰がトップに立つのか、何代も先まで出世のラインが見えていました。つまり東京大学卒、経営企画部で頭角を現したというエリート銀行員が、組織を統治する体制がしっかりしていた。

トップは4年で交代するとか、頭取の後は会長になり、会長に次期頭取の指名権があるなど秩序がしっかりしていたのです。つまりトップと経営企画が強いので、大きな意思決定が迅速にできる。このことが、再編を進める上で大きな強みになっていたと思います。

国内だけでなく、リーマンショックで経営危機に陥った米大手金融のモルガンスタンレーにも巨額の出資に踏み切りました。多額の配当を得ただけでなく、米政府や金融当局であるFRB(連邦制度準備理事会)との関係も改善。グローバルな証券ビジネスを展開も強化するなど、思い切った判断を迅速にしました。その一方で、営業現場の動きは非常に手堅くて、慎重です。現場が経営企画部を中心とした本部に強力に統治されているわけです。

住友銀行は、逆に現場が非常に強い銀行で、結果を出すことを重視するカルチャーです。

「向こう傷を恐れるな」は、1970年代に住友銀行頭取になった磯田一郎さんの有名な言葉です。磯田さんは、経営危機に陥った安宅産業、マツダアサヒビールの再建にも手腕を発揮。住友銀行を大手銀行で収益力トップに引き上げました。ただ会長時代のイトマン事件と深く関与するなど、問題もあった経営者でした。

住友銀行では今に至るまで現場重視、数字重視で、結果を残した銀行員が出世する伝統が根付いています。利益を徹底的に追求する姿勢が、規模で勝る三菱UFJを追い落とし、三井住友が純利益首位の座を勝ち取った背景にあると思いますね。

ただ、三菱UFJも危機感をつのらせています。会長の平野信行さんは、理系出身でデジタルに強い亀沢宏規さんを社長に起用。これまでのエリート路線とは決別する方向だと感じます。三菱UFJも、大きく変化するかも知れません。

今のメガバンクを見ていると、傘下のグループ企業のラインナップにそれぞれ強みと弱みがあります。三井住友の場合は、グループの中にSMBC日興証券という強力な証券機能を持っていることが強みでしょう。

日本の証券会社は、かつては野村證券大和証券日興証券山一証券の4大証券の体制でした。バブル崩壊後に簿外取引などで山一が自主廃業に追い込まれましたが、その後、野村、大和は独立路線を堅持しています。大和はもともと住友グループで三井住友と関係が深く、一時は法人向け業務を実施する「大和証券SMBC」を合弁出資で運営していましたが、2009年に関係を解消しました。ただ三井住友は、顧客に融資だけでなく、株式や社債の発行等のサービスが提供できる欧米型の「ユニバーサルサービス」の提供を目指す意欲は強く、米系大手証券のシティグループが、提携関係にあった日興を手放す際に、三井住友が買収しました。

三井住友は一時、大和と日興の合併を目指し、野村と並ぶ証券ビジネスの砦をグループ内に取り込もうとしていましたが、これは実現しませんでした。ただ、日興をグループの傘下に持っているので、3大メガバンクの中で最強の証券機能を持っていると言えるでしょう。

一方で、傘下の信託銀行の点では、三井住友は、他の2メガから遅れと取っています。みずほフィナンシャルグループは、大手銀行の一角を占めていた安田信託銀行が母体のみずほ信託銀行を持っています。三菱UFJFGの傘下には、三菱信託銀行東洋信託銀行が母体の三菱UFJ信託銀行があります。

信託銀行は、大手銀行と同じように大企業向けの融資を実施している上、相続などの富裕層取引、不動産ビジネスにも強みがあります。三井住友には、SMBC信託銀行がありますが、かつての住友銀行の信託銀行子会社などが母体で基盤は強くありません。

同じ財閥系列の三井住友信託銀行は独立した経営を続けており、太田さんとしてはぜひともグループの傘下に招き入れたいと考えているでしょう。ただ、三井住友信託の経営陣は、三井住友銀行に強烈なライバル心を持ち、吸収されることに警戒感を持っているので、このシナリオが実現するには高いハードルがあります。

それから、規模の利益を追求するという意味では、りそなグループへの接近も考えられます。りそなグループの母体は、埼玉で強固な基盤を持つ埼玉銀行と大阪が地盤の大和銀行です。三井住友にすれば、りそなグループと一緒になって法人、個人の営業基盤をさらに強化したいとの思いは強いと思います。ただ、りそなグループも独立意識が強いので、そう簡単に三井住友の軍門に下ることはないでしょう。