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ロードマップの骨子案では、今後5年間で政策を総動員し、全国で少なくとも100か所の「先行地域」で、2025年度までに、電力消費に伴う温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「脱炭素」を実現する道筋をつけ、2030年度までに「脱炭素」を達成するとしています。

そして、この「先行地域」で都市部や農村部といった多様な「脱炭素」の姿を示し、各地の先進的な取り組みを全国に広げることで多くの地域で2050年を待たずに「脱炭素」を実現するとしています。

また骨子案では、これを実現するための方策として、自治体や金融機関などが中心となって体制を構築し、国が、人材や技術・情報、資金面で支援することや、製品やサービスの二酸化炭素の排出量を算定して表示したり、削減量に応じて消費者にポイントを付与したりすることによって国民の行動変容を促すことなどを挙げています。

政府は、この骨子案を20日開かれる地方自治体との協議の場で示すことにしていて、具体的な政策についてさらに検討を重ねたうえで、来月にもロードマップを策定することにしています。

脱炭素の「先行地域」では、それぞれの自治体にある再生可能エネルギーのポテンシャルを最大限活用して新規導入を進め、その電力を消費するとしています。

そして、新築される住宅やビルは、省エネや太陽光発電などによってそれぞれの建物でのエネルギー消費量を実質ゼロにすることを標準とするとしています。

また、農村部ではバイオマス地熱発電、離島では洋上風力発電、都市部の住宅地では屋根を活用した太陽光発電などそれぞれの地理的な特徴に応じて取り組みのパターンが想定されています。

こうした先行地域の実現に伴う経済活動の規模について、環境省は、人口1000人の地域を仮定した場合、設備投資で40億から100億円程度、再生可能エネルギーの売り上げや省エネによるコストの削減で3億から5億円程度と推計しています。

「都市部型」の先行地域になると期待されているのが、北九州市小倉北区にある「城野ゼロ・カーボン先進街区」です。

自衛隊の分屯地の跡地を中心としたおよそ19ヘクタールの敷地を活用し、10年前から「脱炭素」のまちを目指して整備が進められてきました。

いまは、住宅とマンション、合わせておよそ600戸に1500人ほどが暮らし、病院やレストランもあります。

すべての住宅の屋根、そして街の至る所に太陽光パネルが設置され、街の中で使われる電力をまかなっているほか、排出される二酸化炭素を吸収するためあちらこちらに木が植えられています。

また、住民に電気自動車の購入を促そうと街の中には電気自動車の充電設備も整備されています。

さらに住宅は、ガラスが2重になった窓を使うなどして断熱性能を高め、大幅な省エネが行えるよう設計されていて、街全体として二酸化炭素の排出を実質ゼロにすることができるよう計画されています。

しかし、インフラの整備がほぼ完了したいまも、「脱炭素」は達成できていないとみられています。

街の運営を行う団体の代表理事で住民でもある北九州市立大学の牛房義明教授は、何も対策をとらない場合と比べて二酸化炭素の排出量がどれだけ削減できているかを試算しました。

すると、去年12月は、1日ごとの平均で50%から60%程度にとどまり、「脱炭素」、つまり削減率100%には至っていなかったといいます。

牛房教授は、その理由の1つに、住民の行動が当初想定したほど「脱炭素」に向かっていないことがあると考えています。

この街では、それぞれの住宅に屋根の太陽光パネルで発電している電力と、消費電力の差をリアルタイムで確認できるモニターが設置されています。

住民が日々、これを確認することで省エネに取り組もうという意欲が生まれ、平成25年の段階で、北九州市は消費電力の10%削減につながると見込んでいました。

しかし、住民にアンケートを行ったところほぼ半数の世帯がこのモニターをほとんど、または、全く見たことがないと答えました。

このため、当初見込んでいただけの削減効果にはつながっていないと考えているのです。

牛房教授は、「『脱炭素』のまちをつくるのは思ったよりも難しい。インフラを整備するだけでなく住民一人ひとりが、ライフスタイルを見直す必要がある。そのためにどのような工夫ができるのか、住民全体で考えていきたい」と話していました。

先行地域にとどまらず、より多くの「脱炭素のまち」をつくるため、国が、有力な手段の1つだと位置づけているのが、住民が初期費用ゼロで太陽光発電パネルを設置できる仕組みです。

この仕組みは「0円ソーラー」などと呼ばれ、神奈川県小田原市の地域電力会社、「湘南電力」は去年、この事業を始めました。

会社は、住宅の屋根に太陽光パネルを無料で設置。

住民は、10年または15年という長期間電気を使用する契約を結びます。

自宅の屋根で発電した電気を使うことなどから料金は割安に設定されていて、住民は初期費用ゼロでクリーンで安い電気を使うことができます。

また、契約期間が終わればパネルを無償で譲り受けることができます。

一方、会社は長期間、電気料金を安定的に受け取れるうえ、余った電気は国の固定価格買い取り制度を利用して他の電力会社に売ることができ、双方にとってメリットがある仕組みだといいます。

また、空いている屋根を利用するため新たに森林を伐採するなどの必要はなく、景観を大きく損ねることもありません。

太陽光発電施設を建設する際、大きな壁になっている「地元の同意」がいらないため、国は、太陽光発電を大幅に増やす可能性を秘めているとみているのです。

小田原市の会社では事業開始から半年足らずの受付期間に、想定を上回るおよそ500件の問い合わせがあり、このうち90件近くの住宅の屋根に太陽光パネルを設置しました。

去年、この会社に依頼して自宅の屋根に太陽光パネルを設置した井上孝男さんと洋子さん夫妻。

東日本大震災原発事故をきっかけに、設置を考えるようになりましたがこれまでは初期費用の高さがネックになって踏み切れなかったといいます。

妻の洋子さんは、「『初期費用ゼロ』が決断の決め手になりました。パネルの発電量を見ると、環境を守るために貢献できていると実感でき、電気代も少し安くなったので満足しています」と話していました。

「湘南電力」の古川剛士副社長は、「『0円ソーラー』の普及は地域でお金を回すことにもつながり、災害時に備え、自立した電源を確保する意味でも重要だと思う。普及に向けてはこうした仕組みの認知度が低いことが課題だと考えており『脱炭素社会』に向けて重要だということを打ち出してもらいたい」と話していました。

「脱炭素社会」の実現に向けたロードマップについて、地球温暖化対策に詳しい東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は、「気候変動はグローバルな問題だが、温室効果ガスは私たちの暮らしや経済活動から排出されており、『脱炭素社会』を実現するには、まずは地域で、排出量の削減を積み重ねることが必要だ。『先行地域』になる地域は、脱炭素のリーダーシップをとるとともに、地域を豊かにし、暮らしを向上させる地域活性化のモデルとしてもその役割に期待している」と話しています。

そのうえで、「『脱炭素』に貢献する技術は、すでに多くのものが私たちの手元にある。まずは、いまある技術や仕組みをできるだけ早く、最大限導入して排出を減らしていくことが、気候変動の将来のリスクを下げる意味でもコロナで大きく傷んだ地域の経済社会の復興という意味でも大切だ」と話していました。

20日参議院議院運営委員会の理事会には、参議院の法制局長が出席し、3年前に成立した改正公職選挙法で、電子メールによる投票の依頼などに関する罰則の記載に誤りがあったと報告しました。

さらに、成立した年の12月に総務省から誤りを指摘されながら、2年以上放置していたことも明らかにし、陳謝しました。

これについて理事会では、与野党から「誤りを把握しながら、長期間報告がなかったことは遺憾だ」という意見や「条文の誤りは看過できない」などの批判が相次ぎ、今後の対応を与野党で協議していくことになりました。

自民党の水落議院運営委員長は記者団に対し「法案を提出し直して審議することになると思う。修正しなければならない」と述べました。

参議院の川崎政司法制局長は、参議院総務委員会で「われわれの不手際によって、議員の先生方にご心配をおかけすることになったことを心よりおわび申し上げます」と陳謝しました。

そのうえで、3年前に総務省から条文の誤りの指摘を受けたあとの対応について「条文の整理漏れの情報が担当の部長でとどまり、組織として共有できず、関係者への報告はしていなかった。1年以上たってから組織として把握し、実質的な法律改正をする際に訂正できないか模索している間に時間がたってしまった」と説明しました。

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