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困った福島市が相談したのが、カラスの研究を20年以上続けている宇都宮大学の塚原直樹 特任助教です。

強調したのは「すみ分け」の重要性。

塚原さんによると、カラスは日常的に鳴き声でコミュニケーションをとっていると言います。

例えば、警戒すべきことを仲間に知らせる場合でも、
▽自分の縄張りに別のカラスが侵入した時、
▽天敵が来たことを知らせる時など、
さまざまな鳴き声をその場その場で使い分けています。

これを逆手にとることで、居場所をコントロールしようというのです。
塚原さんは、録音したカラスの鳴き声を再生する“秘密兵器”を開発。
例えば、ねぐらにしている場所で“警戒すべきことを仲間に知らせる”音声を流すと、カラスは今いる場所が危険だと誤って認識し、その場所から飛び去ります。

とはいえ、人間が望む場所に行ってくれなければ意味がありません。

このため鳴き声を流す装置を効果的に配置し、カラスが1日の活動を終えてねぐらに戻るときに出す音声を流して、森林など地域の人の暮らしを妨げない場所へ誘導します。
それでも、カラスは賢く、すぐに慣れてしまうといいます。
このため、音声の組み合わせも定期的に変更しているということです。

気になる効果ですが、これまで30を超える自治体で実証実験を行い、少しずつ成果をあげているといいます。

山形市では、300羽の群れを市街地から200mほど離れた場所に誘導できた実績もあるそうです。

塚原さんはさらに効果をあげるために新たな技術開発を進めています。

宇都宮大学 塚原直樹 特任助教
「カラスの剥製で作ったロボットを開発していて、誘導するような鳴き声を出して、ここは別のカラスがいるからねぐらとしていい場所なのかなと思わせて、そっちに連れていく。そういった技術を開発しています」

一方で、課題もあります。

幼鳥や若いカラスに対して効果が出にくいことです。

こうした若い個体は、音声によるコミュニケーションをそれほど学習できていないのではないかと塚原さんは指摘しています。

塚原 特任助教
「同じような状況でも、うまくいってるところもあれば、そうじゃないところもあったりとか、去年までうまくいってなかったのに今年はうまくいくとか。いろいろな事例を重ねていって、より精度の高いものに仕上げていく必要があると思っています。昔から人とほとんど同じ場所に住んでいる動物なので、うまく折り合いをつけていくことが必要だと思います」
福島市では2021年から実証実験を始め、今年度は装置を10台に増やして対策を進めているということです。

東京のカラス 20年で4分の1に

一方、集中的な対策によって、カラスが激減したところがあります。
東京の都心です。

東京都環境局の報告によると、2001年に、都内におよそ3万6000羽いた、主にハシブトガラスハシボソガラスが現在はおよそ9000羽。
実に4分の1になっています。

なぜここまで減っているのか。

東京大学総合研究博物館の松原始 特任准教授は、2001年に当時の石原慎太郎都知事が始めた3つのカラス対策を理由としてあげています。

1つ目が駆除、つまり捕まえて処分することです。

2つ目が巣の撤去、日本では野鳥の卵とヒナは完全に保護されるため、暮らしに悪影響があっても基本的に、巣に手を出すことはできません。
しかし、東京都は条例で、苦情申請があった場合はカラスの巣の撤去を可能にしました。

そして、3つ目がカラスのエサとなるごみの適切な処理です。

カラスが直接触れられないよう、バケツなどに入れてごみを出すことを推奨したのです。

東京大学総合研究博物館 松原始 特任准教授
「バケツが用意できないなら、ごみをガードできるようなものを普及させようと補助金を出すこともしています。集合住宅の前にダストボックスを置くところも増えています。カラスが餌をあさりにくい状況がどんどん続いていると思います」

一方、松原さんはカラスが減りすぎてしまうことも懸念しています。

松原さんによると、カラスの生息数はエサの多い少ないに大きく影響されるため、ゴミ対策を緩めなければ、本来、今ぐらいの数で横ばいになると言います。

ただ、都は、駆除や巣の撤去を続けています。

個体数があまりに減ってしまうと、自然の生態系にも影響が出るおそれがあると指摘します。

東京大学総合研究博物館 松原始 特任准教授
「カラスは、果実の種を運ぶことに明らかに役に立っています。彼らはものすごい数の種を運んで、時にはカラスにしか運べないような種もその辺に蒔いている、森を作る仕事もしています。あとカラスは、動物の死体や他の動物が倒した獲物の食べ残しをあさる行動がもともとあり、カラスが食べて陸上にフンを落とし、栄養を陸に戻しています。そういうかなり広範囲な物質の循環というものに、すごく役割を持っています」

例えば、今までカラスが食べてくれていた毛虫も生き残ることになります。
これからは桜並木の下などで、もそもそしている毛虫が少し増えるかもしれません。

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