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事務所所属の最大のメリットは“仕事を取ってきてくれること”。

事務所所属のメリットが薄まってきている一方で、近年は事務所を退所するデメリットも薄まっていたはず。

いまは誰でもSNSなどで世界中に発信できるようになっており、タレント本人がすぐに本音や内情を発信しやすくなっていますし、一般の人々の“声”も大きくなっているのです。

コンプラ意識が高まっている昨今、事務所側が退所を引き止めようとパワハラまがいの発言や圧力を匂わせる脅しをすれば、タレント本人がSNSで告発するかもしれません。退所したタレントがテレビなどメディアへの露出が急減すれば、元事務所が干したのだとSNSで悪評が飛び交ってしまうなんてこともあるでしょう。

そうなってしまうと企業としてイメージダウンしてしまうリスクが大きいのです。

そのため事務所側は裏で圧力をかけるなんてことができなくなってきたうえに、出ていったタレントは円満退所であるといったアピールをし、引き続き応援してあげてくださいという声明を出さなくてはいけないご時世になっているというわけです。

ですから事務所を辞めたいと思えば、わりとすんなり退所できる時代になってきていると言えます。もしかするとタレント側からすれば、仕事を取ってきてくれるといったメリットが薄まったこと以上に、退所しても圧力をかけられにくいというデメリットの軽減のほうが、決断する際のファクターとして大きいのではないでしょうか。

余談ですが歌手、バンドなどのミュージシャンであれば、コンサートといった大規模イベントを自分たちだけで運営・開催するのはかなり骨が折れるでしょうから、ノウハウを持った事務所に所属している意味は今でも大きいでしょう。

けれど役者の場合、オファーさえあれば本人が台本を覚えて役作りをして撮影に臨めばおおむね仕事は成立するので、ミュージシャンとは違い個人事務所であってもさほど問題はないはず。3月・4月の退所組に俳優勢が多かったのは、そういった裏事情もあるのかもしれません。

先行投資して育成・売り込みをしてきたタレントがようやくブレイクし、せっかくこれから利益をばんばん出してもらって回収していこうというフェーズに入ったのに、辞めたいと言い出されてしまったら、引き止めることがかなり難しいという現実。人々に夢を与えるタレントをマネジメントする芸能事務所と言えど、企業は利益を出すことが求められる組織なので、この時代の変化は厳しいものでしょう。

俳優やアイドルといった芸能人の稼ぎ口として大きかったのはテレビ出演料やCM出演料ですが、テレビ業界も斜陽傾向が長らく続いており、年々、ギャラ単価が下がってきているのは有名な話。

一説によると、一昔前と比べてギャラ単価は3~4割減少しており、たとえばドラマ1話あたりの出演料が100万円を超える俳優は今やほんの一握りで、1話あたり数万円程度という俳優も少なくないと聞きます。そのギャラをタレント7割:事務所3割や、タレント5割:事務所5割といった比率で分配するため、所属の俳優がドラマにゲスト出演しても事務所の利益はたった1万円なんてこともあるんだとか。

またドラマでもバラエティでも、以前は自社の売れっ子を出演させる代わりに、売り出し中のタレントも一緒にねじ込むバーター出演で露出を上げていき、人気と知名度を獲得させるという営業方法もあったものの、近年はそういった手法もなかなかできないようです。

――先行投資して売れっ子に育て上げても利益回収する前に退所されてしまったり、出演料などのギャランティが激減してしまったり……。いまは芸能事務所としてビジネスを成り立たせるのが、非常に難しい時代に突入しているのではないでしょうか。

#森高千里(富山)

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