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 最近、相次いだ元芸能人の逮捕を振り返ってみよう。高齢女性からキャッシュカードを騙し取ったとして11月に逮捕されたのは、民放ドラマにも出演経験のあった女優のX子(20代)。遡ること約3ヶ月前には、人気学園ドラマにも出演していた元男性アイドルのY男(20代)がガス点検を装った強盗、いわゆる「点検強盗」に入ったとして逮捕された。

 X子もY男も、誰もが知る有名人というほど成功したわけではなかったが、ネット上では「あいつじゃないか」と気づかれるほどの知名度はあったようだ。一般人に比べたら、特殊詐欺や強盗などの犯罪はどうしてもやりづらいはず。そもそも、人前に出て顔を覚えてもらう仕事をしていたにも関わらず、なぜ顔を知られていては不都合が多い特殊詐欺や強盗事件に関与してしまったのか。都内の中堅芸能事務所幹部が、芸能以外の仕事で生活の糧を得ていた駆け出し芸能人の食い扶持が、コロナで減っているのではないかと指摘する。

「もともと女優やタレントの卵が、会員制の夜の店で働いたり、パパ活をやったり、デートクラブに登録して手当をもらうことはそんなに珍しいことでもありませんでした。芸能の仕事だけで生きていけるようになるのは一握り、そこにたどり着くまでは何らかの形で金を稼がないとならない。芸能以外の場所で働くにしても他にも仕事があるだろうと思われるかもしれませんが、それがいいとか悪いとかっていうより、コンビニやアパレル店で働くよりも身入りがよく時間に融通がきいて、何より『こっそりバレずにできる』というのが夜の店で働いたりパパ活をする一番の理由です」(中堅事務所幹部)

 女優だけではない、男性アイドルやタレントも、同じような理由で「こっそりバレずに」できる仕事を求めていたという。

「ホストと一緒で、経営者や資産家女性のプライベートパーティーに呼ばれて足代をもらう、そのうちスポンサーになってもらって、面倒を見てもらう、ということもありました。元子役ですでにアイドルを引退しているような男性にもそうした需要はありました」(中堅事務所幹部)

 はっきり言って「ヒモ」が仕事になっているのだが、自称でも芸能人だと言い続ければ、芸能活動を助けてもらっているということになる。ただ、こうした生き方は、全て「コロナ禍」により、人によっては一切できなくなってしまっているという。

パパ活もデートクラブも、プライベートパーティーもほとんど全滅。かといってコンビニでバイトするわけにもいかないし、グレーなビジネスに手を染め始めた駆け出しタレントは少なくありません」(中堅事務所幹部)

 X子やY男が、幹部が言うような「バイト」をしていたかどうかの確証はとれていない。だが、「女優の卵」や「元タレント」といった看板を使っての仕事が一切なかった、というのは事実のようだ。XとYの事件を取材した大手紙記者の話。

「X子は、芸能人として大した実績がなかったにも関わらず、SNS上では自分を女優と言い続け、アピールしていました。そうすることで女優のままでいられると思ったのでしょうが、結果的に、まともに生きるより、手っ取り早い犯罪をしてでも女優を名乗り続ける道を選んでしまった。Y男も本当はアイドルとしては結局芽が出ず、業界を去り、定職につかないまま、周囲から元アイドルと言われるのを嬉しそうにしていたようです。さらに、周囲は元アイドルのY男を利用してやろうという下心を持つ人だらけ。いつか取り返しがつかないことになるのではと危惧していた知人もいたほどです」(大手紙記者)

 X子もY男も、SNSや身近な人々の間では女優やアイドルで居続けたし、それでチヤホヤされることで、芸能人としてはうまくいかなかったことへの鬱屈した気持ちが落ち着いたのかもしれない。だが、活動実績がないにも関わらず「芸能人」として振る舞う生き方を選び、自分で自分の首を絞めた。その末に犯罪が待っていたというのは皮肉である。

「そういうプライドって、自分自身の葛藤というよりは、誰からどういう風に自分が見られているか、だけ。だからコントロールもしやすいんですよ。こちらが理解を寄せる仕草をすると、すぐに心を開く。簡単」

 こう話すのは、大手芸能事務所の現役幹部(50代)。この幹部もコロナ禍で本業、そしてこっそりできたバイトも無くなってしまい、グレービジネスに手を染めるアイドルやタレントの卵が後を絶たないと話す。

「そもそもアイドルやタレントになる器量がないのに、登録料やレッスン料が欲しいだけの事務所に騙され、金づるとして利用されているだけの人たちがゴマンといるんです。でも、現実に気が付かないふりをして、自称アイドルや自称タレントを続けている。夢に破れていないと自分を騙す現実逃避も、平時では可能だったかもしれませんが、コロナでは流石に無理。こういった人々が、食い扶持がなくなって詐欺師に取り込まれている」(芸能事務所幹部)

 名前は明かせないと前置きするが、週刊誌にも掲載された経験があるグラビア女優が大学生などを中心に広まっているマルチ商法の広告塔になっていたり、ストリート系雑誌のモデルを務めた男らが代表を務める法人が「コロナウイルスに効く」という怪しげなサプリメントを販売している。いずれも、平時であれば芸能人としてのイメージを気にして犯罪に加担することになるかもと絶対に断っていたいかがわしい「仕事」であろうが、食うに困った結果、ということだろうか。

「本物のタレント、芸能人ならちゃんと事務所が守っているから、そこまで心配することはない。問題なのは、誰でも芸能人になれるんだと勘違いして、なんとか業界にしがみついていた『自称』の人。コロナになって誰も面倒を見なくなった」(芸能事務所幹部)

 コロナ禍でいよいよ夢を諦め「普通の社会人に戻ろう」としたものの、やはり仕事がない。そもそも、社会人や会社員として必要なスキルを養ってこなかった人々も多く、電話番すらつとめられないような人もめずらしくない。学び直そうとしても、コツコツ勉強を積み重ねる習慣がついていないから、学校にすら行けない。キャリアチェンジをする方法すら思いつけず、八方塞がりの「積んだ」状態に追い込まれている元タレント、元芸能人も少なくない。ここまで追い込まれてしまうと、もう夢や目標などはどうでも良くなり、ただただ日銭を求めて犯罪すら厭わない。

 何十年も下積みをした俳優やタレント、芸人が、ある日一気にブレイクすることも、かつては度々、目にすることがあった。だから「自称」と言われようとも芸能人を続け、そう名乗ることで幾ばくかの稼ぎを得ていた。だがコロナ禍は、こうした人たちの淡い期待を容赦無く切り捨てた。社会にとって不必要な部分が可視化された、といえばあまりにも冷酷かもしれないが、夢を追い続ける人を容認する余裕がなくなっていることは確かで、絶望から犯罪に誘引される人々はこれからも確実に増えるはずだ。

#芸能班