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日銀が9月19―20日に開いた金融政策決定会合では、金融政策を巡る市場とのコミュニケーションについて議論が展開されていたことが明らかになった。政策委員は、基調的な物価上昇率や経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度について「丁寧な情報発信が必要だ」との認識を共有した。政策委員が想定している政策金利のパスを公表することについては賛否が分かれた。

日銀が6日、決定会合の議事要旨を公表した。決定会合では、多くの委員から7月の利上げが市場でサプライズと受け止められたことが指摘された。

ある委員は、今回の経験を踏まえると「追加的な利上げを行う局面では、政策スタンスをはじめ、市場との対話を従来以上に丁寧に行う必要がある」との見解を示した。

別のある委員は、市場とのずれが生じない発信やずれが生じた場合の適時の修正などコミュニケーションの改善に努めるべきだと主張。「言葉による発信だけでは限界があるので、政策委員による政策金利パスの見通しを公表することもありうる」と述べた。

これに対して1人の委員は「中立金利の不確実性が大きいほか、日銀の経済・物価の中心的な見通しを巡る不確実性も大きいことを踏まえると、先行きの政策金利の見通しを数値で示しても、その幅はかなり広いものにならざるを得ず、分かりやすいコミュニケーションにはつながりにくいのではないか」と指摘した。

7月決定会合の前は政策委員による金融経済懇談会でのあいさつや記者会見がなかった。複数の委員が情報発信の空白期間を出来るだけ作らないようにすることが望ましいとした。
このほか、1人の委員が、経済・物価の不確実性を踏まえると先行きの政策は先になればなるほど「信認を得られにくい」と述べた。別の1人の委員は、今回の経験を踏まえ、期待や予測に重きを置いた政策判断ではなく「実体経済の変化の予兆や進捗を示して市場参加者・企業の理解を高めた上で、データの実績に応じて金融政策を運営するスタンスを示し、理解の浸透を図ることが求められる」と話した。

一連の議論を踏まえ、委員は基調的な物価上昇率や経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度について「丁寧な情報発信が必要だ」との認識を共有した。

米国経済をはじめとする海外経済の先行き不透明感や不安定な市場動向が続く中、決定会合では全員一致で政策金利の据え置きを決めた。

1人の委員は「当面は海外・市場動向を見守り、金融緩和の一段の調整は不確実性が低下した段階にすることが妥当だ」と述べた。この委員は「現在は経済活動のサポートのために緩和的な金融環境を粘り強く続ける我慢の局面だ」と付け加えた。別の1人の委員は今後の政策運営は「下方リスクに十分配慮し、データを慎重に確認して進める必要がある」と指摘した。

8月以降の円安修正について、何人かの委員が、輸入物価上昇による物価上振れリスクが減少していることを踏まえると、米国をはじめとした海外経済や金融資本市場の動向が日本の経済・物価見通し等に及ぼす影響を見極める「時間的な余裕はある」と指摘した。決定会合では、米国経済の先行きや米連邦準備理事会(FRB)の利下げ戦略を巡る不透明感についても発言が相次いだ。

もっとも、10月の決定会合後の記者会見で植田和男総裁は、米国経済の下振れリスクが後退しているとして、今後は「時間的な余裕はある」との表現は使わないと言明した。

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