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中東のシリアで、独裁的なアサド政権が崩壊してから8日で1年です。5日、シリア中部の都市では、1年を前に喜ぶ市民が通りを埋めつくしています。

暫定政府は国際社会に復帰し、新しい国づくりを進めていますが、10年以上にわたる内戦で深まった分断の解消は、そう簡単ではありません。

シリアでは2024年12月8日、親子2代にわたって半世紀以上続いたアサド政権が崩壊し、反政府勢力の指導者だったシャラア暫定大統領のもとで新たな国づくりが進められています。

シャラア氏は、シリアの大統領として約60年ぶりに国連総会で演説したほか、アメリカのトランプ大統領やロシアのプーチン大統領とも会談するなど、各国との関係の構築に努めてきました。

一方、国内は10年以上にわたる内戦で異なる宗派や民族の間で分断が進み、この1年の間にも、旧政権の支持者や少数派の宗派の人たちが標的となる事件や衝突がたびたび起きています。

シリアでは内戦の混乱に乗じて、過激派組織IS=イスラミックステートが勢力を拡大して、ヨーロッパでもテロが相次ぐなど世界的にテロの脅威が高まりました。

国連の幹部は国際社会の継続的な関与と支援が欠かせないと指摘していて、暫定政府が国民の融和と経済の立て直しを進め、国を安定に導けるか、国際社会も注目しています。

ダマスカスは祝福ムード
今月5日、隣国ヨルダンからシリアの首都ダマスカスに向かう旅客機の乗客には、久しぶりに祖国に戻る人も少なくありませんでした。

シリアの上空に入ると、乗客から歓声があがり「私たちの国だ!」とか「アサドを追い出したぞ」などと喜びをあらわにしていました。

ダマスカスの空港は、新しいシリアの国旗や旗の色をあしらった風船などで飾り付けられ、到着した人たちが記念写真を撮っていました。

内戦中にドイツに避難し、そこで生まれた5歳の娘を初めて祖国に連れてきたという男性は「娘はシリアのことを全く知りません。娘にはシリアに戻り、祖国に貢献できる人になってほしいと願っています」と話していました。

ダマスカス市内では、いたるところで国旗をふる人の姿が見られ、祝福ムードが漂っています。

街なかには、「1つの国、1つの人々」とか「私たちが国をつくろう」といった国民の団結や復興を呼びかけるスローガンが書かれた看板が設置されていました。

政権崩壊1年を祝うためカナダから帰国したという女性は「今、シリアでは自由に意見を言うことができます。世界中からシリア人が祖国に戻り、復興に力を貸してほしい」と話していました。

ダマスカス郊外に住む21歳の大学生の女性は「この1年、とてもうれしい気持ちで生きてきました。私たちシリア人はもともと、誰とでも共存できる力を常に持ってきました。いま国民は新たな社会をつくるため、協力しあっています」としたうえで、「シリアだけでは成功できず、すべての国の支援が必要です」と国際社会の継続的な支援を訴えていました。

シリア国内の少数派は
シリアの暫定政府は国民融和を掲げていますが、旧アサド政権の支持者や、アサド前大統領と同じ宗派の人たちを標的にした襲撃が相次ぎ、国の安定に向けて大きな不安要素となっています。

シリア北西部ラタキア郊外の村に暮らすウマイマ・シャヒンさん(52)と、村の世話役のガディル・スレイマンさん(42)は先月、NHKのオンラインインタビューに答えました。

2人は、アサド前大統領と同じイスラム教少数派のアラウィ派で、この地域にはアラウィ派の住民が多く暮らしているということです。

2人によりますと、3月7日の朝7時ごろ、銃などの武器を持った複数の男が村を襲撃し、ウマイマさんの30歳から17歳までの息子4人を家から連れ去ったといいます。

男たちはほかの家からも住民を連れ出し、ウマイマさんの息子たちを含む、200人以上を殺害したということです。

殺された人のほとんどはアラウィ派の住民で、目撃していた人は、男たちが住民を連れ去る際にアラウィ派かどうか確認していたと話しているということです。

息子4人を突然失ったウマイマさんは心に大きな傷を負い、再び襲撃されるのではないかという不安に日々悩まされているということです。

ウマイマさんは「政権が変わったとき、これからはうまくいくと願っていましたが、それは逆で、私にとって最も大切な人が奪われました。私たちは安全に暮らしたいだけです」と話していました。

村の世話役のガディル・スレイマンさんは、「この事態のあと多くのことが変わってしまった。アラウィ派の1人として抑圧されていると思うし、誰もがアラウィ派を攻撃し、どこで何が起きても、アラウィ派が非難される。宗派間の対立を生むようなことはとめなければならない」と訴えていました。

人権侵害などの情報を集めるシリア人権監視団によりますと、ウマイマさんたちの村が襲われたことし3月には、北西部を中心にこうした襲撃や衝突で1000人以上が死亡し、そのほとんどがアラウィ派の住民だったとしています。

人権監視団は、「殺害に関与した者が何の罰も受けずにいることは、社会の安定を脅かす」としてシリア当局に対して、加害者の責任を追及するよう呼びかけています。

専門家「シリアの安定が国際政治の安定に」

シリア情勢に詳しい、立命館大学の末近浩太教授は暫定政府の1年間の取り組みについて「外交面では、シリアを再び普通の国として国際社会に戻すという象徴的な一歩がみられた1年だった」としています。

特に暫定政府が旧政権で関係が冷え込んでいたアメリカとの関係改善を模索していることについて「世界地図の中での政治的な位置づけを大きく変えるもので、中東域内の政治バランスや戦力バランスを変えるという側面がある」と述べ、イランやロシアと関係が深かった旧政権からの大きな方針転換で、中東情勢への影響も大きいという見方を示しました。

一方、シリア国内では、多様な宗教や宗派、民族からなる国をどう安定に導くかが課題になっています。

アメリカのCIA=中央情報局のまとめによりますと、シリアの人口の7割以上を占めるのはイスラムスンニ派で、ほかにアラウィ派などのイスラム教の少数派やキリスト教徒もいて、北部では少数民族クルド人が多く居住する地域があります。

長年の独裁的な統治や、10年以上にわたる内戦で宗派や民族間の分断は深まり、この1年の間も、旧政権の支持者や、アサド前大統領と同じアラウィ派などの少数派が標的となる襲撃事件も相次いでいます。

末近教授は「暫定政府は、包括的な国民対話や和解委員会の設置など融和に向けた象徴的な取り組みを打ちだしてきたが、司法や警察、軍といった政治的な基盤が弱いために、抑え込むことができていない」と指摘しました。

そのうえで「少数派を守るための具体的な治安対策や、少数派を政治プロセスに組み込む公正な政治制度の設計をどこまで具体化できるかが、今後の国民融和の成否を決めると思う」としています。

今後の見通しについて、末近教授は、トルコがシリア北部の一部地域を実効支配していることやイスラエルがシリアとの緩衝地帯で軍の駐留を続けるなど、全土で完全な主権を回復できていないことを指摘し、「暫定政府にはこれを単独で解決する力は現時点ではないので、この状態がしばらく続くことが余儀なくされる」と分析しています。

そのうえで「シリアで起こることが国際政治にまで波及する側面を持っているのは確かだ。シリアの安定が国際政治、中東情勢の安定にはとても大事だというのは間違いない」と述べ、情勢を引き続き注視していく必要があるという見方を示しました。

#中東(251206)

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