『心花、静裏に開く』
P153
実は丸山真男君にね、私が『古教、心を照らす』という本を出した時に送ったんですよ。そしたら同君から、「貴著をひもときながら、一九六〇年代にオックスフォードに滞在していた時のことを思い出しました。そのころは、オックスフォードに経営学の講義がなかったので、どうしてないのかと、教授の一人に聞いたところ、
『経営なんていうものは古典と歴史をしっかり勉強すればできるものだ。わざわざ教える必要はない』
というのが答えでした。
アメリカの経営学を日本が盛んに輸入しているところでしたから、彼の返答が非常に印象的でした。イギリス人の痩せ我慢といってしまえばそれまでのことですが、やはり一つの見識で、いかにもオックスフォードらしいなと思ったものです」という手紙をもらいました。