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『法学の基礎』
P160

 現代の社会は価値体系の分裂をもった多元的社会である。それは生物学的な層・経済的な層に根をおろしながら、政治的な層において表面化する。法形成ことに立法は、こうした多元的な政治的主張の対立・緊張・衝突の動的過程の中に実現される。それは対立する意見の妥協(しばしば政治的取引としての)によって実現されることもあろうが、むしろ、本質的には闘争によって実現される。法形成ことに立法の過程は、妥協よりも闘争によって特徴づけられる。しかし、かようにして形成された法は、ともかくも多元的要素を統合したものとして、拠りどころとなる。したがって、かような法を前提とするところの法実現ことに司法の過程は、立法過程に較べて対立的要素がすくなく、その意味で動的性格が弱いといえよう。しかし、抽象的な闘争過程の所産であるということは、その中に矛盾・対立する諸契機を内在させているということであり、したがって、その解釈をめぐって、ふたたび多元的社会の諸要請が当然に立ち現れるべき性格をもっていることを意味する。もともと非政治的であるべき司法過程においても、政治的要素を完全に排除することができないのは、かように奧深いところに根ざしているものと考えられる。