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検証 首相はなぜ解散を先送りしたのか

 10月9日に麻生からこの構想を聞いた菅は「いま解散すれば大敗しかねない」と必死に止めたが、麻生は聞く耳を持たず、翌10日夜には都内のホテルで自民党幹事長の細田博之と密会し、選挙準備を指示した。

 「選挙の顔」として自民党総裁に就任し、早期解散を模索してきた麻生が慎重論に大きく傾いたのは16日夜だった。

党選対副委員長の菅義偉財務相中川昭一、行革担当相の甘利明の3人。

 麻生「追加経済対策のメニューをズラッと示し、信を問えばいいじゃないか」

 菅「民主党はもっとすごいメニューを出して対抗するに決まっている。そもそも自民党支持層の大半は解散を望んでいない」

 甘利「政権を失えば自民党は空中分解する。勝てる確信がないなら一日でも長くやるべきだ」

 中川「とにかく今は景気だ。しっかり経済対策を実行に移さなければ日本はおしまいだ。解散すれば国民の期待を裏切ることになる」

 菅らの必死の説得で麻生は次第に黙り込んだ。約2時間後、麻生は3人にこう漏らした。

 「う〜ん、悩むな…」

 10月28日、ついに日経平均株価は昭和57年以来26年ぶりに7000円を割り込んだ。これを知った菅はこうつぶやいた。

「もし『10・26総選挙』になっていたら自民党は壊滅していたかもな…」

首相、麻生太郎が追加経済対策を発表する前日の29日朝

 森は胸をなで下ろした。米国発の金融危機を受け、自民党への風当たりが強くなっていることを肌で感じていたからだ。少し前に前首相の福田康夫と会い、「すぐに解散してしまったら、どうして自分が辞めたのか分からないよ」と嘆くのを聞いていただけになおさらだった。

 厳しい選挙戦を戦った経験がない若手を多く抱える自民党には特に厳しい。菅は30日のBS番組で「現職ならばみな公認するような時代じゃない。戦えない人は差し替えたい。それが選挙の厳しさだ」と言い放った。こけおどしではなく、そうしなければ戦えないほど自民党の基盤は崩れつつあるのだ。ある参院中堅はこうこぼした。

 「麻生さんは第15代将軍、徳川慶喜かもしれない。今の自民党は家光(第3代将軍)や吉宗(第8代将軍)のような全盛期とは違う。一生懸命やっても最後は大政奉還かもね…」