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プラザ合意とか

『金融行政の敗因』西村吉正
書評「金融行政の敗因」西村吉正著(文春新書)〜9年前の本。金融危機対処の参考に+東京新聞西村氏インタ

 1980年代後半に日本で生じた資産価格の急激かつ大幅な上昇(バブル発生)の原因は、

①長期にわたる景気拡大や円高による国際的地位の上昇の過程で日本経済の先行きについて強気の期待が高まったこと

②歴史的な低金利やマネーサプライの高い伸びなど金融緩和が長期にわたるなど、マクロ経済政策に適切さを欠いたこと

③金融機関のリスク管理体制などの整備が不十分なまま、金融自由化が過度期を迎え、その中で金融行動が著しく活発となったこと

 ――の三つだった(P17)。

 経済・社会の自由化、国際化は時宜にかなった政策目標だった。規制緩和による経済活性化は第二次石油ショック後の沈滞した雰囲気を明るくしたが、もしかすると、結局はバブル経済を推し進めることでより大きな傷跡を残す結果になったのか。それとも、竹下政権以降、短期間で政権交代を繰り返し大きな政策決定を実行する力が弱まった政治のリーダーシップの欠如が原因なのか。転換期にある日本経済の舵取りをすべき政治がこの時期、政治改革にかなりの力を吸収されたことも日本経済にとって不運だった(P23)。

 それまでは前近代性と結びつけて考えられていた終身雇用制、メインバンク制度、株式の持ち合い、企業間の長期的信用取引関係などの慣習が「日本的経営」と称賛され、債権大国、資産大国、金融大国など「大国」という言葉が流行語となった。

 これに対しデフレは逆である。既得権益の価値を重くするから、社会の発展・前進の足かせとなる面がある。

 冷戦の終結によって、安全保障問題を各国が自前で構築する必要が出てきた。いまさらながら日本の脆弱性・孤立性を痛感させられる。

 第一の敗戦後に実現した「日本経済の奇跡」の中でも、第二の敗戦の種は播かれていた。経済優先の高度成長である。やむを得ずこの路線を選択した吉田茂首相はこのことをおそらく自覚していたであろう。日本人はそのうち、これが世を忍ぶ仮の姿であることを忘れ、「町人国家論」を本気で信じてしまった。だからマネー敗戦を不本意と主張するならば、戦後の経済市場主義をも修正しなければならないことになる(P251)。

金融行政の敗因 (文春新書)

金融行政の敗因 (文春新書)

書評「世界経済危機 日本の罪と罰」野口悠紀雄著(ダイヤモンド社)
世界経済危機 日本の罪と罰
世界経済危機 日本の罪と罰

世界経済危機 日本の罪と罰

オンライン書店ビーケーワン:世界経済危機日本の罪と罰「新自由主義なるもの」

 そもそも、新自由主義か広義の社民主義かなんていう二分法は誤りなのだが、新自由主義に対峙する時、思想の当否はさておき、対峙する側としてもある程度自由化政策をとらざるを得ない。特に、日米のように政治的経済的に世界一緊密な二大経済大国同士の場合はなおさらであろう。完全保護主義なんてしていたら、たちどころに海外へ企業は移転してしまう。

いずれにせよ、米国の経済覇権が一時的にでも頓挫した今、新自由主義とか社民主義とか2分化に拘泥せず、柔軟な政策を打ち続ける時である。そのために政策を打てないのなら、解散総選挙しかないではないか。

戦後日本経済史 (新潮選書)

戦後日本経済史 (新潮選書)

オンライン書店ビーケーワン:戦後日本経済史 新潮選書「あのバブルという時代の生成と崩壊を描いて完膚無し!」

日本では経済界はもちろんマスコミも大半は「こいつはシャレにもならないことを言う」と耳を貸そうとしなかった。ところが彼らの声に熱心に耳を傾ける連中が日本にいたと言うから驚きだ。その連中こそ、ナニを隠そう在日アメリカ大使館の経済調査班である。彼らは日本人から熱心にヒアリングを重ね、やがてその成果は日米構造協議にも反映される。アメリカの調査力、恐るべしなのである。

そして情けなく思うのは、バブルが崩壊したあとの責任の取り方だ。日本では誰も責任を取ろうとしなかった。総理には「山手線の運転手」を自称する宮澤喜一がいたことも不幸の上塗りだったが、とにかく当時の金融政策の責任者大蔵省の官僚自身がバブルに狂奔し、地上げ屋らの接待攻勢にうつつを抜かし、「日本でもっとも優秀なベストアンドブライテストに間違いはありえない」という思い上がりも手伝って、なかなか政策の方向転換を行なおうとしなかった。大銀行の経営者達も、高杉良が垂れ流す「聖人君子イメージ」の高潔な経営者像とはおよそかけ離れた小心者の「サラリーマンの成れの果て」ばかりで、経営責任を取ろうとせず、自らが犯した不祥事が表面化しないよう小池隆一ら総会屋に巨額の現金を上納する不届き者ばかりであったのである。

満州と自民党 (新潮新書)

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「日本株式会社」の昭和史―官僚支配の構造

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現代日本経済システムの源流 (シリーズ現代経済研究)

現代日本経済システムの源流 (シリーズ現代経済研究)

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20080907#1220742792
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20081119#1227087815
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090128#1233140550