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寺島実郎の『環境経済の核心』経済と環境のバランスシート 経済危機で露呈する日本の脆弱性

実はドバイで石油は出ず、外部資金を取り込んであだ花を咲かせたようなものだった。

 サブプライムローン関係者へのインタビューを米国のテレビで見たが、人生に一度も家を建てられない人へ、中東のオイルマネーや中国、日本の過剰流動性を米国に取り込み、たとえ瞬間でも家を持つ夢を見させたのだからよかったのだと開き直っていた。

サブプライム問題は、世界の過剰流動性サブプライムの毒入り金融商品に飛びついたというメカニズムだったのだ。

 ソ連をはじめとする東側の社会主義が崩れたのは、いわば資本主義がしかけたワザによるものであり、「物動経済に近い実体経済だけに重点を置いたような経済メカニズムが、『金融化』によって付加価値を膨らませ、東側経済を崩壊させた」からだという見方がある。そういう意味においては、資本主義の業とでもいうようなものが、過剰流動性を作り出し、その制御に失敗し崩壊し、再び過剰流動性を作り出し崩壊するということを繰り返している。

 今、われわれが目撃しているのは、財政出動や超金融緩和で、しぼんでしまった風船の穴に絆創膏を貼り付けて空気を送り込み、再び過剰流動性を作り出している過程なのかもしれない。

 また、非常に微妙なのだが、時価会計制度は、将来利益を前倒しで取り込み、それを企業の付加価値として膨らませ、短期の利益を極大化させる側面がある。

 このように、すべて前倒しでレバレッジを効かせ、利益をより大きくして取り込もうとするメカニズムを、次から次へと考え出す人たちが存在する。

実体のないものをより大きくし、流動性の中で実力以上の消費社会を作り出していくというメカニズムを、性懲りもなく繰り返している。

 重要なことは、戦後、蓄積してきた産業技術を、今度は食という分野に向けたパラダイムの変換を図り、安心・安全も含め、自国の足元を安定させていくことだ。具体的には、40%以下にまで落ち込んだ食料自給率を70%程度に戻す。そのうえで、エネルギー、資源を含む環境問題に立ち向かっていく必要があるだろう。

 これまでのグローバル化は、米国への過剰依存を前提にし、米国を世界秩序の核として、世界の米国化を「グローバル化」と言い換えていたにすぎなかったのかもしれない。今、われわれが向き合わなければならないグローバル化は、本当の意味でのグローバル化であり、多様化、多次元化、多角化した世界の中で「全員参加型」という秩序に向かってゲームを組み立てていかなければならないだけの話だ。

 日本には、実体性への回帰と自律性を志向し、自らの運命は自ら定めていくという気迫が必要だ。そのためには、まず自分の足元を安定させ、食とエネルギー、資源に関し、できるだけ自らの運命は自らで切り開いていけるような体制にしていく。どこかに過剰依存しハードな形で日本を維持する構想ではなく、やわらかく多様な関係の中でやわらかな仕組みの国を設計していく方向に切り替えていかざるをえないだろう。