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日本の外交力

アメリカに出来ることがなぜ日本に出来ないのか。それは日本が自立した国家でないからである。

それは日米安保条約が日本を無視してアメリカとだけ交渉すれば事足りると思わせているからである。

 日米安保条約は麻生総理の祖父である吉田茂が戦後日本の経済復興を優先するために締結した。国家の自立を損ね対米従属的な条約である事を知った上での決断である。だから他人に締結の責任が及ぶ事を恐れ、吉田はたった一人で条約に署名した。

 それを対等な条約にしようとしたのは岸信介である。日本の戦後復興は既に達成されていたが、なお冷戦体制ではアメリカの「核の傘」に守られる必要があり、安保条約は継続すべきと考えられた。しかし60年安保反対闘争は国民的盛り上がりを見せ、岸は退陣に追い込まれた。その後の日本は「安全保障をアメリカに委ね、経済は戦時中に構築された国家総動員態勢そのままの官僚主導の計画経済」という岸信介らが敷いたレールの上を走り、世界も驚く高度経済成長を成し遂げた。

 しかし冷戦体制の終焉と共に日本の高度経済成長も終わりを告げた。「反共の防波堤」を必要としなくなったアメリカは、フィリッピンのマルコス政権や韓国の全斗煥政権のように「反共親米」政権を次々切り捨てていく。日本の官僚主導体制と自民党長期政権にも厳しい目が向けられるようになった。

こうして世界が新たな秩序を求めて冷戦型の思考から解放されている時、日本だけは相も変わらぬ冷戦型思考の中に押し込められることになった。

 安倍政権と麻生政権は「制裁の一本槍」である。制裁をしても良いが制裁を問題解決に結びつける戦略が見えない。通常の外交なら、表で「制裁」を叫ぶ時には、裏で「アメ」をこっそり手渡すものだが、その形跡がない。公安調査庁によれば、制裁のおかげでこれまで入手してきた北朝鮮情報が入手困難になったと言う。北朝鮮情報なしに問題解決が出来る筈がない。何のための制裁なのかがまるで分からない。国民の人気を得るためなのか、制裁を叫んでわざわざ拉致解決を難しくしてきたのがこれまでの自公政権である。

 悲しいかな戦後の日本は安全保障も外交も全て他人任せできた。ところが麻生総理は「民主党の選挙マニフェストには安全保障と外交が抜けている」と言い、安全保障と外交で論戦を挑む構えだと言う。これだからマニフェストを巡る論戦などやめてくれと言いたくなる。やれば国民を惑わせ世界から馬鹿にされる。どうしてもやりたいのなら「拉致問題がなぜ解決出来ないのか」の一点だけで真剣に議論して欲しい。日本外交の全てが集約されており、しかも議論する意義がある。それ以外に及ぶと嘘に満ち溢れた空虚な議論が繰り返されるだけになる。少なくも今度の衆議院選挙の選択肢とは全く関係がなく意味もない。