https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

対談「新政権で日本はどう変わるか」(上)

 ただ、私も小泉改革の方向性には全然反対ではなかったのですが、政治的には失敗したと思います。竹中平蔵さんにも直接言ったんです。そういう改革は、地方の抵抗が目に見えているから、それなりのセーフティーネットを張るなりしてやらないと、サステナブルにならないよと。でも、見ていると、それをやらなかった。


 そして、首相が安倍(晋三)さん、福田(康夫)さん、麻生(太郎)さんになったら、単純に揺り戻したでしょう。これ、一番やっちゃいけないことをやったわけですね。

かたや民主党小沢一郎さんが選挙対策をやったこともあって、地方にいる不満を持った人たちをきちんと取り込む方向に行った。これ、政治的には正しいんです。

今までの政治のやり方で、何に国民がうんざりしているかというと、官僚や族議員を巻き込んだ、自民党既得権益を代表するようなやり方ですね。

 つまり、徹底的に整合性が取れていて、間違いがない法律を求めるのか、多少失敗してもすぐ直せばいい、というくらいのスピード感を求めるか。


 私は米国など日本以外を見ていますが、ほかの国はほとんど後者でやってきています。日本みたいに緻密なことをやっている国はない。そもそも、緻密なことをやっている日本がうまくいってなかったわけでしょう。


 ということで、日本もそろそろ“脱皮”しなくちゃいけない。高度経済成長でパイが大きくなっていた時は緻密なことがうまくいって、機能したのは事実ですが、これからは、もう少し粗くてもいいからスピードが必要だということでしょうね。

 あとは複雑な構造の中に入り込んだ利権をほぐして、明らかに国民のある程度の不特定多数にプラスになるようなことができるかです。

対談「新政権で日本はどう変わるか」(下)

 マサチューセッツ工科大学のリチャード・サミュエルズ教授が最近出した『日本防衛の大戦略』(日本経済新聞出版社、原書:Securing Japan)では、ゴルディロックス・コンセンサスという指摘をしています。

これからは、ゴルディロックスの中で右か左かの勝負が決まる。そうでなければ、最終的に日本人のマジョリティの心はつかめない。

やはり、政治的な鍵を握るのは、自民党が負けた大きな要因である「地方」なんですよ。投じる票が都市の2倍の重みを持つ地方を放置しておいて、国全体が豊かになるなんていうのはたぶん、長続きしない。


 地方や農業の問題と、グローバリゼーションを合わせて考えるべき。「アジアと地方」というのは実は相性は悪くないし、整合性も取れる。これは、東京など「中央の発想」では出てきません。

民主党になって良かったことは、今まではがちがちだったことが崩れたということです。

 民主党のリーダーや議員は、必死でいろんな情報とビジョンを求めていると思いますよ。どれだけ新しいアイデアを集めて、それらを整理して取り入れるかが重要ですね。

私自身、シンクタンクにいますが、今のシンクタンクには、役所からの出向の人もいますし、役所を辞めた人もいっぱいいます。若い世代は、既に変わってるんです。


 民主党には、その現実を生かせるような体制にしてほしい。シンクタンクや民間企業を含めて、アイデアを幅広く取り入れるようになると、答えやオプションがいろいろ出てくるでしょう。実はものすごく大変なチャレンジなんですけどね。

ある程度の大きさの国ならば、地方にそれぞれ自立できる力があって、うまく分散しています。田中角栄・元首相流に言えば、「国土の均衡ある発展」ですよ。

 日本の安全保障の前提として、米国との同盟関係を守ることは当然ですが、発想の転換をしくてはいけない。米国との調整だけをすればいいのではなく、米国と組んで何をすべきか考えなければならない。

 確かに55年体制社会主義陣営にくみしていた人たちは、日本と米国が何かしら安全保障の協力をしたり、憲法第9条の解釈にちょっと触れただけで「軍国化する」って、大騒ぎしていた。


 そのトラウマ自民党支持者の人たちにある。そろそろ、この55年体制の右と左の極端なところは排して、もう少し真ん中で、それこそゴルディロックスを考える段階なのでしょう。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090912#1252713940(浜矩子 > 黄金の均衡点)