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時代の風:「脱官僚」掲げる新政権=同志社大教授・浜矩子

英国BBC放送の超人気テレビ番組に、「イエス・ミニスター」(かしこまりました、大臣)というのがあった。

脱官僚政治を掲げた政権が発足したので、筆者は目下、この番組の録画を改めて最初から鑑賞し直している。ほとんど全セリフを暗記するほどに繰り返し見ている作品ではあるのだが、今回は、また感慨ひとしおだ。

どこまでが政治で、どこからが行政か。どこまでが政策の形成で、どこからが政策の実施であるのか。この微妙にして厳しい政と官との棲(す)み分けに関して、某事務次官が大臣殿にご進講申し上げる場面がある。

今回、新しい発見があった。それは、この政官攻防物語における第三の存在だ。その名はメディアである。メディアをどう味方につけるか。どう敵に回さないか。いかにメディアをおだてて、脅して、翻弄(ほんろう)するか。そこを巡る政官の主導権争いも、なかなか見応えがある。それを今回の鑑賞で初めて強く意識した。

しっかりした情報を政と官から引き出していくには、彼らの生態と関係のカラクリに精通し、それをうまく活用することが前提になる。だが、その前提そのものが崩れるとなれば、報道も行動原理と取り組み姿勢を変えていかなければならない。

沈黙のカーテンの中で、官がやりたい放題をするのは、許さない。その観点から、メディアが会見廃止を糾弾するなら、それはわかる。だが、便利で、使い慣れた情報チャンネルを奪われることへの抵抗であれば、それはちょっとまずいと思う。

 さて、ここで気掛かりなことが一つある。それは、今日のイギリスのメディアに、この種のバイブル的高品位番組がすっかり作れなくなっているということだ。上質の風刺が姿を消して、下卑た笑いの追求ばかりが目立つ。これはどうしたことだろう。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090919#1253361031