【ちょっと江戸まで】法政大学教授・田中優子 「カムイ伝」が教えてくれたもの
私は『カムイ伝』を、江戸時代の社会構造と産業を講義するための教科書に使ってきた。その講義内容は『カムイ伝講義』という本になって、昨年出版されている。
私はこの「差別」ということを、江戸時代だけの現象として読んだのではなかった。今のこととして読んだのだ。
『カムイ伝』の武士たちは、自分たちが知らなかった人々の生活に、ある日気づいて愕然(がくぜん)とする。今でも、安定した生活を送っている人であればあるほど、大事なものが見えない。その自覚が必要だ。『カムイ伝』は「今」を教えてくれる。