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加護野忠男・神戸大学教授インタビュー  「日本は製品のイノベーションに目が向きすぎ。仕組みのイノベーションを起こせ」 | 日本を元気にする企業の条件 | ダイヤモンド・オンライン

これから元気の出る企業の条件は、製品のイノベーションから、仕組みのイノベーションを実現できる企業でしょう。

 ロック・フィールドは、保存のきく方法で食材を配送し、店舗で最終的に食材を加工する。その際、全国にある2つの工場から配送するので、どこかの地域が雨でも、どこか別の地域は晴れているので、生産が平準化できる。廃棄損も少なくなるし、ビジネスを平準化することに成功しています。

 家電メーカーの中でユニークだったのは、松下電器です。もともと松下電器は、仕組みで勝っていた。かつては日本全国に、2万数千店ともいわれるナショナルショップを展開して、このショップがお客さんと緊密な関係を持ちながら、次の商品を提案していくという独特の販売のやり方を採っていた。無理をして安く売らなくても、お客さんの価値を高めていけば、ビジネスが成立していました。

 ところが流通革命の中で、販売は量販店が中心になる。量販店で売るとなると、品番が決まっているので、他のお店からお客さんを引っ張ってこようと思うと、値段を下げるしかない。量販店は値下げせざるをえないし、メーカーも製品の価格が低下するという方向にいかざるをえないということで、みなが疲弊するタイプの競争になってしまった。

 したがって、これからは、ネットを利用した直販ショップ制度のようなきめ細かなサービスが見直される可能性があると思います。特に今後は、消費者が高齢化してくるので、きめ細かなサービスが求められてくる。

 あまり知られていませんが、神戸には血液検査装置を作っているシスメックスという会社があります。ここは検査のための試薬も売っていますが、血液検査の精度を高めるというサポートを、グローバルに上手に行うことによって成長している。機械だけだったら、中国でも作れます。

外資系のBOSEという会社があるでしょう。ここは直販で音響機器を販売していて、価格面では値下げ競争に巻き込まれていない。BOSEは「量」を追うのではなく、一定のファン層にしっかりと売っていく。

 日本でも楽天のような企業があるにはありますが、日本の場合は、既存の流通の効率がいい。日本の流通は効率が悪いと、間違ったことを言う人が、ものすごく多いのだけれども、本当はたいへん効率がいいし、きめ細かいのです。街の本屋さんでも、上得意客には本や雑誌を配達してくれますよね。

日本では、街の中にある小売屋さんがしっかりしていて、きめ細かいサービスを行っていた。ただ、最近はそれが弱くなってきたので、イノベーションが起こりやすい環境になってきたといえます。

 仕組みビジネスの難しさは、いろいろな人と協力していかなくてはいけないということです。

 そのためには、だれかが利益を独り占めするような仕組みでは、だれも動かない。みなで利益をうまく分配する仕組み、リスクも上手に分け合う仕組みが、でき上がっていないといけません。

 いまスーパーのビジネスシステムがしんどくなっていますね。結局、これは「卸」を排除して中抜きし、メーカーと直接取引をやろうとしたために、かえってシステムの効率が悪くなってしまったからです。

 さらに、卸は小売とメーカーの間に入って、それぞれの立場を翻訳して相手に伝えてくれる、一種の翻訳者の役割を果たしていました。みんなで協力関係を作り上げていくのが必要な時に、卸を排除したために、この翻訳の役割を果たす人がいなくなってしまった。やはり事業システムというのは、みんなで支えていくという発想が必要なのです。

 システムをイノベーションしていくとなると、取引相手の気持ちが理解できることが大切です。そのためには、自らの利害ばかりでなく、大きい算盤(そろばん)が弾ける、そういう資質が必要でしょうね。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20091202#1259724700(マネジメント層)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20091125#1259107780(社会変革)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090824#1251084397(冨山和彦1)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090615#1245070909(冨山和彦2)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20091009#1255062123(歌ちゃん)