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伊藤 元重 デフレはユニクロの責任なのか

 ユニクロなどが好調なのは、ユニクロがデフレを起こしているからではない。経済がデフレ基調だから、ユニクロのような店が好調になるのだ。小売業には様々なタイプの店がある。低価格を指向する店も、低価格よりは高品質や高サービスを重視する店もあるだろう。どのような店が選ばれるのかは、消費者が決めることである。

 さて、今のデフレ状況を脱却させ、日本を元気にするにはどうしたらよいのだろうか。この点をもっと真剣に議論しなくてはいけない。一部には、日本銀行がもっと積極的に貨幣を出してインフレを起こせばよいという議論があるようだ。

 しかし、20年近く構造的にデフレギャップ基調できている日本経済で、金融政策を動かしたからといって、打ち出の小槌のように突然物価が上がり、景気がよくなることがあるのだろうか。あまり乱暴な金融政策をとれば、需給ギャップを解消するというよりは、金融的な混乱を起こし、悪性のインフレになるリスクさえある。


 もちろん、今の日銀の慎重すぎるように見える金融政策運営については市場からも厳しい批判が出ている。より踏み込んだ金融緩和政策を考える必要があるかもしれないが、それで魔法のようにデフレギャップが解消するというものでもない。

 結局のところ、より構造的な問題に踏み込んだ抜本的な経済政策をとらないかぎり、日本のデフレは解消しない。需給ギャップが大きいということは、建設・小売り・卸し・諸々の製造分野における下請けメーカーなど、多くの分野で過剰企業、過剰施設、過剰生産体質が残っていることが大きい。


 他方で、医療介護・環境技術などこれから伸びていく分野において大幅な供給力アップが求められている。供給力を増やすだけでなく、そうした供給を生み出すべく需要を創出することが必要である。


 ようするに、伝統的な産業から新規分野への大胆な産業構造のシフトが求められているのだ。残念ながらこうした産業構造のシフトのスピードが非常に遅い。