民主党のマニフェスト違反は有権者がとやかく言う話であって、自民党に口を出す資格はない。沖縄の米軍基地移転や予算編成の遅れについても自民党は文句をつけているが、ニッチもサッチもいかない元凶の基地利権や巨大財政赤字をこしらえてしまったのは、自民党だろう。まさに「あなた方には言われたくない」のだ。
そのところは、国民もイヤというほど分かっている。だから、鳩山政権がいくらヘマをやろうと、グズグズしていようが、自民党の支持率は全く上がらない。いや、上がらないどころか、政権攻撃をすればするほど支持率が落ちている。
打つ手なしの自民党は、保守主義への純化路線に切り替えようとしている。来月の党大会で綱領を改定する方針だ。早い話、これまで何でもアリ路線から、よりタカ派へシフトしようというわけだ。
「政権を奪われた民主党に対し、自民党は対立軸をつくれないでいる。国内政策はもちろん、日米関係が基軸の外交・安保政策でも民主党と大差はない。しかも、個々の政策は民主党の方が国民の支持を受け、先を行っている。民主党政権の揚げ足を取る以外に、国民に訴えるものがなくなっているのです。といって小泉構造改革や新自由主義はブッシュ米国の失敗で矛盾が露呈し、破綻してしまっている。そこで国家主義色が漂う保守主義回帰を言い出しているのでしょう。後ろ向きな保守主義に純化するしか対立軸をつくれないところまで自民党は追い詰められているのです。ただ、これではグローバリズムが進んでいる時代に、外国排除主義的なナショナリズムが成り立つはずがない。安倍晋三元首相のように、お国のために命を投げ出す特攻隊員を称える考えが自民党支持を広げるとはまったく思えません。そもそも支持基盤が急速に崩れているうえに、保守主義への純化路線を進めたら、さらなる支持者離れは確実です」
それは自滅・自殺への道でしかないのだ。
「自民党は過去20年間の経済政策で失敗を重ね続けた。それで国と国民生活は疲弊し、政権交代という庶民革命が起きたのです。新しい政権に文句を言ったり、批判するヒマがあるなら、過去の失政・悪政をひたすら反省し、謝罪することの方が大切ですよ」(筑波大名誉教授の小林弥六氏=経済学)