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「角」から見る日本・その2「持たざる国」日本が、いま角栄から学べること

 歴史のひとつの転回点は、田中角栄の登場した73年前後にあったのではないか。その時代の課題は、いまだに引き継がれ、角栄の愛弟子、小沢一郎民主党政権のプロデューサーとなった今、新たな解決策を求められている。

独立国としての日本の急所は、エネルギー資源のほぼすべてを海外からの輸入に頼っていることです。

 でも、エネルギー資源は「価格次第でどこからでも買える」単なる経済商品ではない。戦略商品であり、政治商品です。

 エネルギー資源の獲得と地球温暖化問題への対応、そして軍事戦略は明らかに連携しています。

青森県六ヶ所村には核燃サイクル施設がありますが、ここのフランスやスペイン出身の外国人研究者の子ども7人の授業を受け持つ民間団体に、年間約1億円が払われているんですが、ご存じですか?

で、日本はどうなのでしょうか。「エネルギー資源の安定供給」のためには「供給源の多角化」と「自主開発」が不可欠です。しかし、先ほど申し上げたように、資源には経済だけでなく政治も軍事も絡んで、なかなか手を出せない。だからついつい商社におまかせになる。最近、外務省は三井物産伊藤忠商事三菱商事などのOBを中東やアフリカ、東ヨーロッパの国々の大使に起用していますが、ベースは「商売」ですよね。

―― その状況に戦後、初めて挑んだのが・・・ということですね。

ええ。総理大臣として資源の「川上を攻めろ」と突っ込んでいったのが、田中角栄です。

 田中の発想は単純明快です。供給源を多くし、自主的に資源開発するには、首相の自分が相手の川上である首脳に直接交渉する、というものでした。英国の北海油田ソ連のチュメニ油田、インドネシアの油田、そしてフランスの濃縮ウラン、オーストラリアとのウラン資源開発、ブラジルのアマゾン開発……すべて、自ら相手国のトップに交渉しました。

 政治や外交の専門家は、あまり指摘しませんが、核廃絶を訴えたプラハ演説で、オバマは「各国が核の平和利用の権利を享受できるように『国際核燃料銀行(an international nuclear fuel bank))といった民生分野の原子力協力の新しい枠組みを構築すべき」と語りました。国際核燃料銀行は、IAEA(国際原子力機関)の管理下で、各国に濃縮や再処理技術を移転させない代わりに供給を保証するシステム。ウラン資源や濃縮、再処理技術を一元的にコントロールするしくみです。

 だからイランは、オバマがいかに甘い言葉で囁きかけてこようが、ウラン濃縮施設を手放そうとはしない。

 田中が自主油田を確保しようとイギリスやロシア(旧ソ連)と「密使」を含めて、どれだけ大変な資源外交を展開したか、政策担当者は振り返ったことがあるのでしょうか。田中が、資源派財界人のサポートを得ながら、各国首脳と膝詰めで石油の交渉をした時代から現在まで、自主油田の比率はほとんど変わっていません。

民主党小沢幹事長は「オヤジ」と慕った角栄の「川上を攻めろ」という教えを守って、選挙を戦いました。会社や団体という川下ではなく、どぶ板選挙で直接川上の有権者を攻めて勝ちました。ならば、国民生活の川上であるエネルギー資源はどうするのか……。対米関係にも波及する問題なので、いまはじっとようすを見ていますね。

 管副総理が率いる「国家戦略局」には、エネルギー資源の確保と地球温暖化問題への対応、そして国防問題をリンクさせた青写真を示してほしい。それが、本来の国家戦略でしょう。そのとき、もっとも大きな課題として浮上するのが、アメリカとの同盟関係です。田中角栄の資源外交が突き当たった壁も、そこだったのです。

―― 実は私、小学校のころ、『坂の上の雲』単行本版を枕元にならべて毎晩読んでいたんです。とても満ち足りた読書時間でしたが「あれが史実そのままではないんだ」と気づくのに、ずいぶんかかりました。

『氷川清話』は編者によって、話がねじ曲げられた部分があるんですよ。

この本の編者の松浦玲さんが後書きで書いていますけれども、明治期に吉本襄という勝海舟のマニアックな研究者がいて、彼が『氷川清話』を編集したときに、勝の政権批判を当たり障りのないような表現にしたり、チョチョッと変えたりしているわけです。

改ざんとまではいかないんだけれども、自分の好みで言い方を変えたりもしていると。「これはちょっとおかしいだろう、勝がしゃべった原本に近いものにしたい」ということで編んだのがこの講談社学術文庫なんですね。

司馬遼太郎の小説はそこが巧みだから、我々は気持ちよくなっちゃうんですよ。

勝のリアリティーはすごい。勝は歴史の当事者であるんだけれども、権力側に入らなかった。しかも時代を見ている。歴史を写す鏡みたいな感じがしますよね。ある種の客観性が担保できるんじゃないですかね。

勝っちゃって、やっぱりど真ん中に入っちゃうとなかなかね、相対化しにくいですよね。

氷川清話 (講談社学術文庫)

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城下の人―石光真清の手記 1 (中公文庫)

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曠野の花―石光真清の手記 2 (中公文庫)

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望郷の歌―石光真清の手記 3  (中公文庫 (い16-3))

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誰のために―石光真清の手記 4 (中公文庫 (い16-4))

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医療のこと、もっと知ってほしい (岩波ジュニア新書)

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田中角栄 封じられた資源戦略

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後藤新平 日本の羅針盤となった男

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成金炎上

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