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「増税による経済成長論」に見る菅財務相の危うさ、民主党政権の宿痾|辻広雅文 プリズム+one|ダイヤモンド・オンライン

 最先端技術が新しい製品を生み出し、あるいは新鮮なアイディアによって画期的なサービスが生まれ、つまり新しい価値が生み出され、市場が拡大する。そうした事業の成功、産業化が果たされる裏側には、組織マネジメント、法制度、さらに社会的インフラまでを含んだ総体の変革が必要である。それが経済成長を生み出すイノベーションであろう。そこに政府の果たす役割があるとすれば、イノベーションの呼び水となるような財政資金の使い方や法制度、社会インフラの改善を行なうことである。

1990年代、長期経済低迷に苦しめられた政府は、自律的経済成長メカニズムを生み出すイノベーションの創出に努力するのではなく、ひたすら場当たり的な雇用拡大策に走った。莫大な財政資金を公共事業、つまり建設業に投入し続けたのである。その結果、今、私たちは二つの問題に苦しめられている。

 第一はいうまでもなく、莫大な財政赤字だ。第二は、1%弱にすぎない潜在成長率である。生産性が著しく低い建設業に対しては、構造改革を促し再編を進めるべきだった。ところが政府は逆に、雇用確保の名目で労働人口を大量に流入させ続けたのである。その結果、経済を成長させる日本の実力――潜在成長率は、低下してしまったのである。

 こうしたリスクを取るくらいならば、増税などしないほうがいいだろう。やはり増税社会保障制度を立て直す、または広く財政を健全化し、国民の将来不安などを取り除いて、経済成長につなげていく方策なのである。

 4月16日の日経新聞朝刊によると、「菅氏は財務相就任後にサミュエルソンの『経済学』を購入、最近は熱心に官僚と議論を戦わせている」とある。

 故ポール・サミュエルソンノーベル経済学賞受賞者で、近代経済学の父と呼ばれる。ケインズ経済学と新古典派経済学(市場万能論)を総合する新古典派総合の理論を確立した。ごく分かりやすく言うと、総需要政策で景気の過熱や後退を避けることができる、とりわけ不況時に公共投資を実施することの有効性を指摘したことに、菅財務相は魅かれたのであろう。ところが、この理論は1960年代の米国の民主党政権に多大な影響を与えたのだが、70年代に入って生じたスタグフレーションに有効な対策を示せず、急速に存在感を失った。

 一方、グレゴリー・マンキューは今年52歳のハーバード大学教授である。29歳の若さで同大教授に就任、2003年には米国大統領経済諮問委員会委員長に就任している。マンキューもケインズ派と古典派を結びつけたのはサミュエルソンと同じなのだが、「ニュー・ケインジアン」と呼ばれ、市場の機能と役割に高い評価を与え、とりわけ不況時の分析においてはそうであり、世界標準の経済学の代表といえる。また、彼の『マンキュー経済学』や『マクロ経済学』は簡潔、明瞭な経済学の教科書として今、世界中でベストセラーになっている。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100420#1271743558
http://hatenatunnel.appspot.com/d1021/20090408#1239148454
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090403#1238735523