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【佐藤優の眼光紙背】小沢一郎は徹底した「悪党」になれ

菅直人体制下の民主党は、霞が関官僚によっては御しやすい与党だ。そもそも消費税率引き上げは、税金によって生きている官僚の悲願である。自らが不利になることを想定した上で、霞が関の悲願である消費税率引き上げを、10%という数字にまで踏み込んで言及した菅総理は、「素晴らしい宰相」なのである。ここでつまらない政界再編などが起きて、「消費税率引き上げに当面、反対する」などいうスローガンを掲げ小沢一郎衆議院議員(前民主党幹事長)の影響力が強まることだけは是非とも避けたいというのが官僚の本音だ。

 検察官僚が「政治とカネ」の問題で小沢氏と鳩山氏を徹底的に叩いた。そして、外務官僚が鳩山包囲網を構築し、米海兵隊普天間飛行場の移設を自民党政権の日米合意を踏襲する辺野古崎近辺(沖縄県名護市)とすることに成功した。その過程でマスメディアが、徹底した反鳩山キャンペーンを展開した。その結果、「小鳩政権」が崩壊した。すると、民主党の支持率がV字回復した。官僚の意向を、マスメディアも国民も支持したことになる。

 ところで、菅総理の消費税率引き上げに関し、自民党の主張する10%を参考にするという発言は、財務官僚の意向をそのまま反映したのもだ。マスメディアも概ね好意的反応を示し、読売新聞は社説で欧州並みの15%を基準に考えよとまで主張した。しかし、国民は菅発言に強く反発した。官僚とマスメディアが足並みを揃えても、有権者がそれに激しく反発し、今次参議院選挙で有権者民主党に対して厳しい評価を下した。筆者はこのことをとても高く、肯定的に評価している。消費税のような国民の生活の根本にかかわる問題について、有権者は、官僚と官僚に親和的な政治家、メディア・エリートの言説を鵜呑みにしないということが示した。日本の民主主義が機能していることが明らかになったと筆者は見ている。

 今回の参議院選挙で民主党が圧勝していたならば、菅政権に近い民主党の国会議員と官僚、そして官僚の情報を右から左に流すメディア・エリートと有識者が広義の「権力党」を形成し、この勢力が日本社会をファッショ化する危険性があった。民主党のファッショ化を防ぐために、現下の政治情勢において衆議院参議院の「ねじれ」は必要だ。

検察官僚にとっては、小沢一郎氏さえ消え去れば、民主党はとても御しやすい「権力党」だ。今後、検察が、自民党の「金庫」である国民政治協会の狙うことになれば、民主党と官僚の連携が完全に成立する。いずれにせよ、小沢氏の影響力が二度と政権中枢に及ばないようにし、日本国家の支配者が官僚となる体制を構築することが、官僚の集合的無意識だ。

 脱官僚というスローガンで、実質的な官僚支配を強める「トロイの木馬」のような国会議員が与党にも野党にもいる。

いま求められているのは、小沢氏が、中途半端ではなく、徹底した「悪党」になり、官僚により半ば支配されている菅政権を内側から揺さぶることだ。