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予想できたはずの危機後の円高−−池尾和人(@kazikeo)

現実の為替レートの動きは、ファンダメンタルズを反映した基調的な動きに、ランダムで予想が困難な要素がいろいろと加わったものだと解釈できる。後者の要素の方が大きくて、全くファンダメンタルズとかけ離れたようなレートが形成されることも珍しくない。だから為替のトレーダーとかの立場であれば、相場動向を予想するに際してマクロ経済的な要因など一切考慮しないという割り切りをすることも、それぞれの判断ということで許容される余地がある。

けれども、リーマン・ショックを契機に、経常収支不均衡の強制的な是正が進行した(不均衡の規模はいまや危機前の半分以下に縮小している)。それにともなって、資本移動の額が少なくなれば、それだけ円を売ってドルを買う動きが乏しくなるのだから、基調的な動きはいずれ円高ドル安に向かうはずである。この意味で、変動相場制開始以降の実効実質円レートの平均値(ほぼ現在の水準)に戻す程度のことは、十分に予想し、備えておくべきことだったといえる。

日本の政策当局が批判されるべきだとすれば、円高に対する対症療法的な対応を迅速かつ大胆にやらなかったことなどではなく、結果的には1年半はあった期間のうちに来るべき事態に備える計画的な取り組みを何らしてこなかったという点についてある。

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