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【敗北 尖閣事件】(下) 責任、検察に転嫁…「起訴すべき!」会議室に響いた声

 「証拠も十分で事案も悪質。起訴すべきです!」


 24日午前10時すぎ。東京・霞が関の法務・検察合同庁舎19階の最高検会議室。中国漁船衝突事件で逮捕、送検された中国人船長に対し、起訴を主張する幹部の声が響いた。那覇地検が中国人船長の釈放決定を発表する、わずか4時間前の出来事だった。


 集まったのは、大林宏検事総長最高検の伊藤鉄男次長検事、勝丸充啓(みつひろ)・公安部長と担当検事に加え、那覇地検の上野友慈(ゆうじ)検事正と福岡高検の岩橋義明次席検事。国会議員の逮捕など重要案件を最終決定する際に開かれた「検察首脳会議」ともいえる顔ぶれだ。
 この時点では、方針が釈放で一致していたわけではない。1時間に及んだ会議。出席者の一人の発言を契機に全員一致での釈放決定への流れが強まった。


 「4人の人命はどうなるんですか。(起訴したら)危ないんじゃないですか」

 船長の10日間の勾留(こうりゅう)延長が決定した19日の時点で、検察当局は「起訴」に向け意気軒高だった。「異論を唱える人は誰もいなかった」(幹部)という。

 潮目が変わったのは21日だった。中国の温家宝首相が「釈放しなければ、中国はさらなる対抗措置を取る用意がある」と揺さぶりをかけた。間もなく、邦人4人が中国で行方不明との情報がもたらされる。

このころから検察内では「船長にいい弁護士がつき、容疑を認めさせれば略式起訴で済ませられるのに」と弱気な声が漏れ出した。


 しかし、船長は否認を続け、連日、中国の在日大使館員と接見した。「何か吹き込まれたのは間違いない」と海保関係者。否認のままでは略式起訴にできない。流れは釈放に傾いた。

 23日には那覇地検が外務省の担当課長から参考人聴取として状況を聞いた。起訴したら日中関係はどうなるか、影響を中心に説明を受けたとみられる。首相官邸からも法務省側に早期解決を望む意向が非公式に伝えられたという。24日には柳田稔法相が2回も官邸に入り、2回目は慰労会を中座して仙谷由人官房長官と1時間面会。