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元検察幹部:総長に私信「一部調書は検事の作文」

 検事による供述調書の作成を巡り、元検察最高幹部の一人が99年、北島敬介検事総長(故人)あてに「一部の調書は『検事の作文』といわれても仕方がない」と懸念する私信を送っていたことが分かった。

 私信を書いたのは、東京地検検事正などを経て、総長、東京高検検事長に次ぐ検察ナンバー3ポストの大阪高検検事長を最後に退官し、当時は中央更生保護審査会委員長だった増井清彦氏(77)。

 前年の98年、水戸地検水戸市の建設設備工事会社と同社社長を脱税で摘発し起訴したが、公判で弁護側から「取り調べ検事が異なるのに、参考人や被告の供述調書に全く同じ文章が多数あり、あらかじめワープロで作成したクローン(複製)調書の疑いがある」などと批判された。計16通322ページのうち166ページに重複箇所があるうえ、参考人2人の調書は23ページにわたって同一だったという。

 増井氏は弁護側と知り合いだったことからこうした経緯を知り、私信を北島総長に提出。

「一言一句同じ供述をすることは経験上あり得ない。かつてロッキード事件公判で被告側から調書について『検事の作文』で信用性がないという主張があり、当時は一笑に付したが、この調書については検事の作文といわれても仕方がない一面があるように思う」

「検事が強い予断を持ち誘導的な取り調べをした疑いを払拭(ふっしょく)できず、供述の信用性、任意性まで否定されかねない」

「発覚しなければよいというものではなく、虚偽公文書作成や証拠隠滅などの嫌疑を生じかねない」

「事態は氷山の一角で、病弊は既に広くまん延しているのではないか」

「検察官の取り調べや調書への信頼が失われれば検察運営上致命的」

 これに対し、北島総長は「調査させたところ、調書作成に横着をしたが、有罪は間違いないとのことだった。各地検に注意させる」と伝えてきたという。最高検は00年9月、全国の高検、地検に「いわゆるクローン調書の例が散見されるなど憂慮すべき実態がうかがわれる」として取り調べと調書作成の適正化を図るよう通知した。