明治、大正期に陸軍で教育を受けた、秩父宮雍仁(やすひと)親王はじめ5人の皇族(当時)が10代のころに書いたとみられる西洋史の試験問題の答案が、神奈川県内の民家で見つかった。
答案を見つけたのは、神奈川県鎌倉市の団体職員、中沢夏樹さん(64)。陸軍の幼年学校、士官学校で明治29年から歴史教師を務めた祖父、澄男さんの遺品整理中に発見した。中沢さんは「祖父が皇族を教えていたことは知らず、驚いた。当時のエリート教育の高度さを感じた」と話している。
答案は計10点で、明治生まれの秩父宮雍仁親王、梨本宮守正(なしもとのみや・もりまさ)王、北白川宮成久(きたしらかわのみや・なるひさ)王、東久邇宮稔彦(ひがしくにのみや・なるひこ)王、賀陽宮恒憲(かやのみや・つねのり)王の5人が10代後半に書いたものとみられる。
出題テーマは、古代ローマの帝政▽帝国主義時代の植民地経営▽アメリカの対外政策など。
近現代の皇族の歴史を研究する静岡福祉大の小田部雄次教授は、現在の大学受験か大学の教養科目レベルに相当し、難易度は高いとし、「単元のまとめか小テストとみられ、将校としての戦術戦略構想などに役立つ、国際関係の基礎知識を学ばせていたことがうかがえる」と話す。
例えば、秩父宮雍仁親王は大正8年の答案で、米国がハワイやフィリピンを併合した経緯を「大統領マッキンリーハ遂ニ帝国主義ヲトルニ至リ、ハワイノ王政ヨリ共和制ニ遷(うつ)レル時ニ乗ジ此ヲ併合シ、東西戦争ヲ以テフィリッピン群島ヲ得、此ノ後今ニ至ルマデ合衆国ハ其ノ外ニ対スルヤ帝国主義ヲ以テシ」と記述。植民地支配を否定したモンロー主義を捨て帝国主義となったとしており、「当時の(日本の)米国観が分かる」(小田部教授)という。
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